若手懇談会前回の講演会
111回講演会報告について


第111回若手懇談会開催報告

【日時】2013年7月9日(火)13時30分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】ガラスとは何か

[講演1]「ガラス転移研究の最近の進展」
      名古屋大学 宮崎 州正 先生

ガラス転移とは何なのか、どこまでわかっていて、どこがわからないのかを式を使わずにわかりやすく説明していただきました。シミュレーションによって導きだしたガラス転移点(動的転移点)と近似理論を用いて計算した結果との比較から、ガラス転移を完全に説明するモデルが未だに見つかっていないことを、解説していただきました。また、ガラス転移のメカニズムを解明する試みの一環として、「ジャミング転移」の解明を紹介いただきました。講演から、物質のガラス転移に多くの謎が残されており、研究対象として魅力的であることが伝わりました。 宮崎先生ご講演



[講演2]「水の特異性からせまるガラス形成の起源」
      東京大学 小林 美加 先生

水がいかに不思議な物質であるか、何故ガラス形成能が低いのかを説明していただきました。先生は局所安定構造が物質の安定構造を決めているという立場に立ち、ガラス形成能を研究されています。多くの物質では局所安定構造が結晶の基本構造と異なるため、競合によりガラス化が起きますが、水の場合は例外的に、局所安定構造が氷の基本構造と一致するため、水はガラス形成能が低くなるとのことです。しかし、塩の添加等で安定な結晶構造を変化させることで、ガラス形成能を制御できるとのことです。また、ガラスのフラジリティは、結晶構造と局所安定構造の競合の度合いを反映しており、ガラス形成能が高いほどストロングなガラスになるとのことです。物質のガラス化を解明するために、ガラスになりにくい水を研究するという手法が面白く、興味を惹かれました。 小林先生ご講演



[講演3]「食品素材のガラス状態、ガラス転移」
     東京海洋大学 鈴木 徹 先生

身の回りにあるガラス状態の食品、ガラス転移を示す食品、ガラス化による食品の性質変化について説明していただきました。キャンディや乾燥パスタなどはガラス状態で保存されているため、安定性が高く、DSC等で分析すると、ガラス転移現象を示すとのことです。かつお節の加工性が、ガラス転移によって急激に変化している実験結果を紹介していただいたことで、食品のガラス転移の存在が伝わりました。自分の周りにガラス転移を示す物質が多く存在することに驚くとともに、今まで以上にガラスの存在を身近に感じることができました。 鈴木先生ご講演



 今回、「ガラスとは何か」をテーマに先生方にご講演いただきました。多くの方にご参加いただき、興味深い講演に多くの質問があがりました。ご講演頂きました3人の先生方、ならびに多くの参加者の皆様には、講演後の懇親会にもご参加頂き、本会を良い交流の場として積極的にご活用頂きましたことに感謝致します。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2013年7月9日
若手懇談会 副会長
岩尾 克・細川純平




講演会アンケート結果 過去の講演会

若手懇談会のトップページへ戻る