若手懇談会前回の講演会
118回講演会報告について


第118回若手懇談会開催報告

【日時】2015年5月15日(金)13時55分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】ガラスを多角的にみる−応用に向けたガラスの課題−

[講演1]「データ記録用シリカガラス」
      京都大学 下間 靖彦 先生

 シリカガラスにフェムト秒パルスレーザーを照射すると内部にナノ周期構造が形成され、メモリとして使用可能となります。先生には、フェムト秒パルスレーザー加工の基礎からシリカガラスのメモリや半導体への応用まで幅広くご講演いただきました。ナノ周期構造はガラスの内部にあるため光や水分による劣化が生じにくく、シリカガラスをメモリとして使用する場合、寿命は約10億年になります。これは、DVDといった光メディアの寿命(約100年)に比べて格段に長く、本メモリの特徴の一つです。また、空間に書き込むことでメモリを多次元化し、記録容量を増やすこともできます。記録書き込み速度が遅いことが現在の課題とのことですが、寿命、容量の観点から次世代のメモリとして非常に魅力的だと感じました。 下間先生ご講演



[講演2]「レンズ用ガラスに求められること‐最高の食材を目指して‐」
         キヤノン(株) 小山 剛史 先生

 レンズ用ガラスに求められる特性の話を中心に、その歴史から今後の考え方までご講演いただきました。レンズ用ガラスの屈折率は、結像性能やガラスの厚さに影響を与えます。また、光は波長により屈折率が異なるので、光の色によってピント位置が異なります。ガラスの分散性は、このピント位置差の大小に影響を与えます。さらに、ガラスが球面である場合、レンズの中心を通る光と端を通る光が一点で交わりませんが、非球面にすることで解決できます。このように、レンズの特性はガラスの屈折率、分散性、形状により決まります。カメラ用レンズはこれらの特性が異なる複数のレンズが組み合わさってできており、その組み合わせ方によりレンズの特徴が決まります。今後は監視カメラ、車載用カメラの市場が拡大することが予想され、これらのカメラには、これまでとは異なる特性(例えば赤外領域の屈折率)が求められる可能性があるとのことで、研究に対するモチベーションが上がる内容でした。 小山先生ご講演



[講演3]「中空光ファイバとその医療応用」
      東北大学 松浦 祐司 先生

 空気をコアとした中空光ファイバの開発と、同ファイバのラマンスペクトル測定などへの応用に関してご講演いただきました。人体の70%は水でできているため、医療用レーザーは水に対する吸収係数が大きい赤外光が適しています。しかし、赤外透過材料として使用されているものは、カルコゲナイドガラスのような毒性、化学的耐久性に問題がある材料が多く、医療に応用できません。先生は、このような材料を使用しない、空気をコアとした中空光ファイバを医療用に応用する研究を行っておられます。コアが空気なので通常の光ファイバと異なり、全反射は不可能ですが、金属などをコーティングすることで損失を低減しています。現在、中空光ファイバは歯科治療用レーザーに用いられているとのことでした。今後、画像診断へ応用して腫瘍の早期発見を可能にしたいとのことで、非常に興味深い内容のご講演でした。 松浦先生ご講演



 今回、「応用にむけたガラスの課題」をテーマに、様々なデバイス用ガラスについてのご講演を行っていただきました。参加者の方からも質問を多くいただき、活発な議論が行われました。本会を良い交流の場、情報交換の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2015年6月4日
若手懇談会 副会長
池尻純一、山本陽介




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