若手懇談会前回の講演会
120回講演会報告について


第120回若手懇談会開催報告

【日時】2015年11月6日(金)13時55分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】ガラスを多角的にみる−大先輩に学ぶ−

[講演1]「我が国の鉄鋼製造とその役割」
         金沢大学 客員教授 松宮 徹 先生

 鉄鋼業が環境、資源問題に対して行ってきたことについてご講演いただきました。近年の鋼材は、強度-延性バランス、耐食性、溶接性などが向上しており、自動車・船舶の軽量化、変圧器・モーターでの鉄損低減化、ボイラーの稼働温度の高温化等に成功しています。その結果、社会での省エネルギーに寄与しています。また、日本は副生ガス・排熱回収のように省エネ効果の大きい製造方法を積極的に導入した結果、他国に比べて鉄鋼製造時のCO2ガス排出が最も少ないとのことです。さらに、製鉄工程の副生ガスから水素を製造し、鉄鉱石の還元にも使用する技術開発のプロジェクトも行っているとのことです。ガラスと鉄鋼を単純に比較できませんが、鉄鋼の製造工程は省エネルギー化が非常に進んでいるという印象を受けました。 松宮先生ご講演



[講演2]「日本のガラス産業と欧米の研究の動向」
         北陸先端科学技術大学院大学 名誉教授 牧島 亮男 先生

 日本のガラス産業の今後の展望についてご講演していただきました。現在、新興国の経済成長に伴いガラスの世界的な市場は成長しています。しかし、中国でガラスの製造設備が多く導入された結果、板ガラスの過剰供給が生じています。日本のメーカーは生産プロセスの省エネルギー化や高付加価値化戦略に注力して競争力を強化しなければいけないとのことです。また、近年の国際学会についてコーニング社の発表を中心にレビューしていただきました。2015年5月に行われた国際学会では、光学ガラスや強化ガラスに関する発表が数多く行われた中、コーニング社はガラス状態や構造など、基礎的な研究結果についても発表を行ったとのことです。 牧島先生ご講演



[講演3]「等方性とガラスの構造」
      京都大学名誉教授 曽我 直弘 先生

 ガラスは結晶と異なり等方的な構造をとるため、固体における応力と体積変化の組成依存性を議論するための理想的な状態です。先生は、さまざまな組成のガラスの弾性率や比熱の測定を行い、その結果からガラスの構造の解析を行ってこられました。ガラスの構造(例えば、SiO2ガラス中のSi-O-Si-O-Si員環の分布など) は、これまで第一原理法などを用いて解析してきましたが、近年、Spring-8等による詳細な解析が可能となったとのことです。その他、様々な計算により得られた解析結果についてご講演いただきました。普段の業務で詳細なガラスの解析は行わないので、少し難解でしたが興味深い内容でした。 曽我先生ご講演



 今回、「大先輩に学ぶ」というテーマで、ガラスについてだけでなく、ガラス業界や鉄鋼業界の動向に至るまで幅広い内容でご講演を行っていただきました。参加者の方からも質問を多くいただき、活発な議論が行われました。本会を良い交流の場、情報交換の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2015年12月4日
若手懇談会 副会長
池尻純一、山本陽介




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