若手懇談会前回の講演会
124回講演会報告について


第124回若手懇談会開催報告

【日時】2016年10月7日(金)13時55分〜17時15分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】未来を作るガラス材料

[講演1]「窓に設置するシースルー太陽電池」
         三菱化学株式会社 原田 忠英 先生

 シースルー型の新規有機薄膜太陽電池について、商品の特徴と魅力、提案中の使用方法等についてご紹介いただきました。 フィルムを巻きとりながら塗布する製造プロセスは、樹脂基板に製膜できるため、軽くフレキシブルなパネルを作製可能です。シースルーであることから、 今まで太陽電池の取付け場所として活用できなかった建造物の窓に貼付可能です。さらに曲面対応が可能であり、用途拡大が期待できる太陽電池です。 一方、課題としては製造コストが高い、耐用年数が短いといったことが挙げられ、開発を継続中とのことです。発電素子は水分に弱いため封止を行っております。 ウインドウフィルム用途でガラスに貼り付ける場合にはウインドウフィルム同様、熱割れの確認が必要です。これらの問題を克服すれば、ガラスを始め、 様々な基板に応用できるようで、今後の材料の性能アップや使用方法の広がりで、社会への貢献が非常に期待される内容でした。 原田先生ご講演



[講演2]「リン酸塩ガラスの特徴と用途展開 等」
      名古屋工業大学 春日 敏宏 先生

 骨の形成を促進させる生体活性な新規ガラスの開発について紹介いただきました。 リン酸塩ガラスは、生体内での溶解速度が速いため、骨形成促進剤として安定的に効果を得ることが難しいという問題を抱えています。 そこで、酸化ニオブ添加により溶解速度を抑制して、骨形成を促進する手段を見出されました。また、メタリン酸塩には酸化カルシウムを 酸化マグネシウムに置換することで溶解を抑制する方向に働き、一方ピロ、オルトリン酸塩にはそれらを促進する効果があるとのことです。 さらにこの置換においては、混合カチオン効果が見られるなど、種々の特性・傾向を明らかにし、提案されているとのことです。 これらの内容について、ガラス構造における仮説を交えて説明いただきました。今後、再生医療に貢献できる、効果的な材質の開発が期待される内容でした。 春日先生ご講演



[講演3]「高耐候性を特徴とする蛍光・蓄光ガラス」
      産業技術総合研究所 赤井 智子 先生

 ハイパワーLED等の応用を目指した新規ガラス材料として、紫外・近紫外域での励起により発光する蛍光ガラスの開発について紹介いただきました。 多孔質ガラスに遷移金属や希土類イオンをドープすると、局所的に歪んだネットワーク構造内に金属イオンが位置し、量子効率の高い発光を実現できるとのことです。 また、表面にナノオーダーの周期構造を付与することで、前面から光を取りだすデバイスを開発されました。 加えて、高い残光輝度を有するガラスと蓄光顔料のコンポジット材料を紹介いただきました。 ガラスフリットと蓄光顔料の混合物を焼成するだけのシンプルな工程で作製でき、結晶組成も自由に設計できるため、 結晶化ガラスに比べて自由度が高い材料を開発・提案されています。蓄光顔料とガラスの屈折率マッチングや、複数の酸化物を添加することによる結晶化の抑制、 酸化錫の添加による残光輝度向上など、技術面で蓄積された多くの知見を説明いただきました。樹脂では問題となる経年劣化も、これら無機材料で解決できるようで、 今後の応用・発展が期待されます。 赤井先生ご講演



 新規材料をテーマにした3つのご講演を拝聴し、着想や着眼点の重要性から、開発におけるアプローチに至るまで、参考になることが多い実りある講演内容でした。社外の諸先輩方からこのような事例を学ぶ機会は、若手研究者にとって貴重な体験だと思います。これも本セミナーの目的の一つと思いますので、今後とも是非NGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2016年10月14日
若手懇談会 副会長
宮部大亮、矢倉拓海




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