若手懇談会第80回例会
第80回講演会報告について


第80回若手懇談会開催報告

【日時】2005年7月22日(金)13時30分〜17時
【場所】独立行政法人 物質・材料研究機構 物質研究所(茨城県つくば市)
【参加人数】23名(講師5名、事務局は除く)
     (懇親会参加者:23名+講師5名+事務局2名)

【講演会・見学会内容】
 今回の若手懇談会には23名の方に参加いただき、2件の講演(1件はオムニバス形式)と見学会および懇親会を開催いたしました。講師の先生方に非常に分かりやすいご講演を頂き、また、実験装置等の見学をさせて頂き、非常に有意義な懇談会でした。懇親会ではポスターセッションを行ない、お酒を飲みながら、議論が非常に盛り上がりました。


(講演会の様子)

[講演1]「ガラスからの非線形光学結晶の生成およびその光学特性」
      物質・材料研究機構 若手国際研究拠点 高橋 儀宏 先生

 非線形光学効果は光変調、光スイッチ、高調波発生などの応用に重要です。ガラスへの2次の非線形性の発現方法の例として熱ポーリング、紫外線ポーリングなどの方法がありますが、構造緩和による非線形性の減衰の問題があります。そこで、ガラスホスト内に非線形光学結晶を析出させる方法やガラス化する非線形光学結晶の利用が考えられています。これには化学量論組成に近いガラス組成の利用や高い非線形性を持つ結晶の析出が有効で、これらを実現する結晶化ガラスの系としてLaBGeO5、Ba2TiGe2O8、Ba2TiSi2O8などの研究例についてご講演を頂きました。Ba2TiGe2O8系結晶化ガラス関してはLiNbO3単結晶に匹敵する2次の非線形性が得られており、現在世界のチャンピオンデータであるそうです。Ba2TiSi2O8系結晶化ガラスについては均一核生成により、ガラス内に数百nmオーダーの結晶(ナノ結晶)を析出させることにより、SHG(第二高調波)発生と蛍光発光が確認されています。発光素子としての応用の可能性が考えられ、非常に興味深い内容でした。

参考図書:
宮澤信太郎 「光学結晶」(倍風館 1995)
高橋儀宏・小松高行「表面結晶化ガラスにおける大きな非線形性の発現」
New Glass, vol.17, pp.21-26(2002)
高橋、北村、井上、紅野、藤原、小松「BaTiSi2O8ナノ結晶化ガラスの光学特性に及ぼす熱処理温度の影響」
Journal of the Ceramic Society of Japan, vol.113, pp.419-423 (2005)

[講演2]「物質研究所機能性ガラスグループの研究概要」(オムニバス形式)
      (1)「コンビナトリアルガラス合成システム」
      (2)「第一原理計算手法によるガラスへのアプローチ」
      (3)「ファイバヒューズと光ヒューズ〜壊れるファイバあれば護るファイバあり〜」
      (4)「ドライ/ウェットプロセスの組み合わせによるガラス上多機能三次元ナノ構造体」
      物質・材料研究機構 物質研究所 機能性ガラスグループ
      (1)小西 智也 先生 (2)末原 茂 先生 (3)轟 眞市 先生 (4)和田 健二 先生

 小西先生からは、コンビナトリアルガラス合成装置に関するご講演を頂きました。自動調合装置・並列熔融装置・物性評価装置を駆使して、希土類を含まない蛍光ガラス(発光中心については現在研究中)や赤色系着色ガラス、高硬度ガラスなどの研究を精力的に進めておられるとのことでした。
 末原先生からは、基本ガラス形成物質(例としてB2O3 SiO2 P2O5 TeO2)のクラスターモデルを使って、第一原理計算からガラスの特性(非線形光学特性、屈折率等)を計算するという内容のご講演を頂きました。屈折率やχ(3)の実測値と計算値の比較が行なわれ、屈折率に関してはかなり近い値が得られることが分かりました。第一原理に関する分かりやすい説明と、計算を実施する上での注意、ガラスと計算科学に関する先生の考察が非常に興味深かったです。計算のみでは何にもならず、実験結果へのフィードバックが重要であり、常に「知りたいことは何か?」を頭に置くことの重要性を再認識しました。
 轟先生からは、過剰な光入力に対して自律的に光ファイバ回線を切断する無給電デバイスである「光ヒューズ」と、光ファイバによる伝送路の途中に存在する欠陥により発生する「ファイバヒューズ現象」に関するご講演を頂きました。光ファイバの伝送路の途中に急峻な曲げや光吸収体が導入されると、その部分への局所的なエネルギー集中が起爆剤となって連鎖的な損傷発生がファイバに沿って光源に向かって伝播し、ファイバ全体を破壊してしまいます。ファイバヒューズ現象については実際に見せて頂くことができました。ファイバの中を火の玉が移動して行く様子(=光を放ちながら連鎖的な損傷がファイバ内を伝播)は圧巻でした。
 和田先生からは、ガラス表面への三次元ナノ構造体の作製に関するご講演を頂きました。導電膜を付けたガラス上にドライプロセスでAlを成膜加工し、陽極酸化法により自己組織化した多孔質アルミナとし、そのナノ細孔へゾル−ゲル法及び電析法によって酸化物や金属を導入して機能化した三次元のナノ構造体を作製することができます。成膜加工したAl膜の限界高電位付近での均一な陽極酸化皮膜の生成は容易ではないそうですが、導電膜の性質や成膜条件を適切にコントロールすることによって緻密な成膜加工膜を得ることが可能で、このようにして作製したAl膜は陽極酸化しても剥離が起こらないそうです。この研究の目的のひとつに有害有機気体の分解があり、アルミナ多孔膜とゾル−ゲル法+エッチングの組み合わせによって作製されたTiO2配列のナノ構造体によって、高効率光触媒が得られています。成膜技術の改善や複数分野のノウハウの集約が重要とのことでしたが、物理と化学の幅広い領域の技術を応用したものであり、他の技術への更なる発展性を感じました。

参考図書:
鯉沼秀臣監修 川崎雅司監修「コンビナトリアルテクノロジー 明日を開く‘もの作り‘の新世界」(丸善 2004)

[見学会]機能性ガラスグループの実験設備見学

 講演会終了後の見学会では2つのグループに分かれて、コンビナトリアルガラス合成装置、コンビナトリアルガラス評価関連装置、コンビナトリアルセラミックス合成関連装置、光学材料測定装置の見学をさせて頂きました。珍しい装置が多く、活発な質疑もあって盛況な見学会となりました。

 講演会の後には恒例の懇親会が開かれました。12件のポスターが懇親会会場に掲示され、懇親会の中でのディスカッションが行なわれました。お酒も入って更に活発な議論が交わされ、参加者同士の親交を深めました。

 今回の懇談会開催にあたり、機能性ガラスグループの井上ディレクターをはじめ、物質研究所の皆様に様々なご配慮を頂きました。この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。
 次回も更に活発で有意義な会となるよう、皆様のご参加をお待ちしております。

以上

2005年8月8日
若手懇談会 副会長
山本 一洋



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