若手懇談会前回例会
86回講演会報告について


第86回若手懇談会開催報告

【日時】2007年2月19日(金)13時30分〜19時
【場所】(社)ニューガラスフォーラム 田中田村町ビル8階A・B・C会議室
【参加人数】25名(講師3名、事務局は除く)

【講演内容】
  今回の若手懇談会は「磁気ディスク関連」をテーマに、加瀬林先生(JEITA 東芝)、越阪部先生(HOYA)、松岡先生(滋賀県大・教授)にご講演いただきました。市場動向、需要予測、ハードディスクの構造、ガラス基板の特徴、ガラスの破壊挙動、など、産業の全体像から基礎研究の最先端までを網羅する内容になりました。


[講演1]「JEITA 磁気記憶装置専門委員会需要予測の紹介」
      JEITA磁気記憶装置専門委員会委員長 株式会社東芝 加瀬林 祐 先生

 パソコンの出荷台数、メーカーによるHDD(ハードディスクドライブ)の出荷実績および統計情報を元に需要予測を紹介いただいた。携帯オーディオが牽引役となりHDDの小型化と大容量化が進み、さらにデジタル家電に代表される新規事業の立ち上がりが需要拡大に拍車をかけ、国内外とも好調な伸びを示すことが示された。競合するフラッシュメモリも急激に伸びているが元々の市場規模の差と大容量化に対する優位性の点で抜かれることはないと、日本がリードする分野での力強いお言葉であった。近年、垂直磁気記録方式への切り替えが進んでおり、今後も大容量化は続く。
 現在の発展は、ガラス基板による寄与が大きい。すなわち、表面粗さ品質の改善とアルミ基板に優る耐衝撃性のさらなる進歩である。今後、ガラス基板の生き残りは高まる要求に応える性能と低コスト化に掛かっており、若い研究者、技術者にとって刺激になる講演であった。


[講演2]「モバイル用途ハードディスク用ガラス基板」
      HOYA株式会社 越阪部 基延 先生

 HDDの主要な用途、素材に求められる事項、加工工程の特徴について詳しく解説された。
   HDD用基板材料には、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、結晶化ガラス、アルミニウムの4種が存在するが、引張強さと硬さにおいては、ガラス基板が他の材料に比して優位を保つ。これまでのHDDはパソコンの普及が牽引役であった。今後は音楽プレーヤーや携帯電話への搭載に後押しされ、発展は止まらない。この分野はモバイルを前提としたダウンサイジングが競争力となりガラス基板の適用が加速される。それ故に、HDDに搭載されるガラス基板も高精度化、高品位化、低コスト化への要求が厳しくなるであろう。ナノスケールの加工技術と高い寸法精度をいかにして低コストで達成するかが今後の浮沈のカギである。


[講演3]「ガラスの破壊と粉砕の組成依存性」
      滋賀県立大学 松岡 純 先生

 ビッカース圧子を用いた“押し込み”と“引っ掻き”の研究に専心された先生は、冒頭に“ガラスの破壊に関する究極の状態は割れないガラスではなく条件によっては割れないガラスだ”と話された。夢のない話に聞こえそうな内容でも先生が語るなら興味深い。今回の講演では、圧子を押し付けた時に生じるガラス特有の高密度化現象の概要、ヤング率やビッカース硬度などの組成に由来する特性値とクラックの伸長のしやすさとの関係など、多数の研究事例を披露いただいた。先生はこれまでにクラックの低速伸長に関わる種々の構造因子を見出し、これらの寄与度については今後の検討課題とされた。絵に描いた餅は眺めず、現実を究める先生の活動こそガラス業界を後押しする力になると確信している。



 今回の講演会は、会員の皆様を対象とさせていただいたアンケートの調査結果を反映し、多数の講演希望をお寄せいただいた磁気ディスク関連で開催しました。聴講者の意欲は極めて高く、活発な質疑応答が行われました。恒例の懇親会でも止まることなく大いに盛り上がりました。
 佐藤会長が中心の新役員チームとして初めて望んだ若手懇談会は、非常に盛況でした。今後も魅力ある若手懇談会を目指して活発に活動します。そしてガラス業界の発展に繋がれば幸甚です。今後とも、皆様のご参加をお待ちしております。

以上

2007年3月15日
若手懇談会 副会長
井上 輝英



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