若手懇談会前回の講演会
99回講演会報告について


第99回若手懇談会開催報告

【日時】2010年4月23日(金)13時30分〜17時10分
【場所】ニューガラスフォーラム会議室

[講演]「ガラス系固体電解質の開発と全固体リチウム電池への応用」
      大阪府立大学大学院 林晃敏先生

 既に幅広く普及しているリチウムイオン電池ですが、電気自動車などへの適応を考えた際に安全性の面で問題が残っています。そこで、現状の有機電解液を無機系固体電解質に置き換え電池を不燃性の固体とする、全固体リチウム電池の研究が近年盛んに行われています。林先生は、全固体リチウム電池への応用が期待されるガラス系固体電解質の研究をされています。ご講演の中では、電解質としてのガラスの優位性や、高イオン伝導体としての硫化物ガラスの作製方法、ガラスの熱処理による超イオン伝導性結晶の析出方法などをご説明いただきました。また、さらなる高性能化として、正極中の電極活物質をコーティングすることによって出力特性を向上させる例もお話いただいきました。ガラスはその透明性からどうしても光学的な分野への応用が多いですが、今回のご講演はガラスのイオン伝導性に関するもので、非常に興味深く聞くことができました。 林先生ご講演



[講演]「有機薄膜太陽電池の研究開発」
      (独) 産業技術総合研究所 當摩哲也先生

 産総研の太陽光発電研究センターでは、結晶シリコンやアモルファスシリコンなど太陽光発電に必要な材料デバイスの開発から発電効率の測定依頼まで、幅広く太陽光発電に関する業務を受け持っています。當摩先生はその中でも、有機半導体型薄膜の太陽電池の開発をされています。今回は有機薄膜太陽電池の種類から作製方法、発電効率をいかに上げるかなど、幅広くご講演いただきました。また、有機薄膜太陽電池は他の太陽電池とは異なり、軽く柔らかいため形状が自由に作れるという特徴があり、その特徴を生かしたプリント技術(ロールトゥロール)もご紹介いただきました。現状、他の太陽電池と比較すると発電効率では劣りますが、なによりも安価であることから、その可能性に大きな期待が持たれます。 當麻先生ご講演



[講演]「太陽光発電の必要性と動向」
      豊田工業大学大学院 山口真史先生

 太陽電池を用いた太陽光発電システムは、エネルギー問題を解決する手段として大きな期待が寄せられています。山口先生には、世界各国における太陽光による発電量、太陽電池モジュール生産量の傾向から太陽電池の種類など、基礎からご講演いただき、現在の太陽光発電の状況とその展望について、良く理解できました。今後さらに太陽電池が浸透していくには、さらなるコストダウンと発電効率の増加が必要であるようです。日本は一時、住宅用太陽電池への補助金が廃止されたことなどから生産量が伸び悩みました。しかし、最近補助金が復活したことに加え、エネルギー問題に対する意識が日々高まっていることから、今後ますます太陽電池関連産業は成長が続くと予想されます。技術の進展に対して、我々もさらに貢献しなければならないと思いました。 山口先生ご講演



 今回の講演会のテーマは「環境とエネルギー」でした。林先生からは、電気自動車などクリーンな輸送技術への応用が期待される全固体リチウムイオン電池に関連した話題を、當摩先生と山口先生からは、環境にやさしく無尽蔵なエネルギーの利用手段である太陽電池に関連した話題をご提供いただきました。また、技術者として地球環境やエネルギー問題に大きく貢献できることのできる分野で、身の引き締まる思いがしました。ご講演いただいた先生方には深く御礼申し上げます。次回は長岡技術科学大学での見学会です。今後ともニューガラスフォーラム若手懇談会をよろしくお願いいたします。

以上

2010年6月2日
若手懇談会 副会長
小路谷将範・加藤幸子




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