NEDO知的基盤創成・利用技術研究開発プロジェクト

ニューガラスの設計に資するデータベース構築

−高信頼ニューガラスデータベース技術の開発−


研究開発の目標
国際ガラスデータベースIntergladの高信頼化と収録データ数増強を可能とする高信頼性データベースシステムの構築を目指す。これにより、データベースの信頼性確保とデータ強化を実現する。

研究開発の内容
データ増強とデータの高信頼化を図るシステムを構築する。
  @ 高信頼物性測定技術の開発(京都大学再委託)
 ガラスの転移温度は、多くの学術論文に測定データが記載されているが、正確な測定が難しい上に熱処理方法などガラス試料の調製方法等により測定値が変動しやすい性質がある。ガラス材料のガラス転移温度は一般的には示差熱分析により測定される。しかしながら、示差熱分析ではガラス転移温度における熱量変化が小さなガラス(例えばシリカガラスや硫化物ガラス)においてはガラス転移温度が明瞭に観察されないという弊害があり、それらのガラス試料ではガラス転移点の精密測定は困難である。また、粉末試料を用いて測定する必要があり、耐湿性・耐酸化性の低い試料等では測定は困難である。
 本研究ではこれらの問題を解決する手段として光学的にガラス転移温度を測定する手段を開発する事を目的とする。ガラス転移における光学的特性(透過、散乱、蛍光など)の変化を光学的手段によりとらえるガラス転移温度の測定技術を開発する。この方法は、透明なガラスである必要があるという制約があるものの、熱量変化が小さなガラスや熱膨張係数の小さなガラス、大きさの十分でない試料、高分子系ガラス等広い範囲のガラスに対して適用可能であり、ガラス転移温度を正確に測定することができるものと期待される。最終的には従来の熱力学的な方法にかわる新たな測定方法の確立と標準化を目指す。
A 微量成分影響度予測技術の開発(京都工芸繊維大学再委託)
 国際ガラスデータベースIntergladに収録されている代表的な物性について、ガラス組成系ごとに微量成分の影響の度合いを実験および公的資料から解明し、論文中に記載が必要とされる微量成分と物性を明らかにする。
 二成分系のガラスは難溶解性、難ガラス化のものが多いので、これらのガラスを作製または効率的に作製するための装置として炭酸ガスレーザ装置を熱源とする溶融装置を開発し、B2O3系ガラス、Al2O3系ガラスを中心に多種類の二元系ガラスについてガラス作製と物性測定を行い、各二成分系の組成と構造・物性との関係を調べ二成分系ガラスの集合体としてのガラスの構造と物性を組み立てることにより、物性へのガラスの微量成分の影響を定量的に把握する。
B 組成物性データ理論評価技術の開発(ニューガラスフォーラム)
 ガラス物性値は、ガラス構造が変わらない組成範囲においては組成値を変数とする多項式で表現できる場合が多く、すでに多くの理論関係式が報告されているが、それらの関係式は、20万件余のIntergladデータの中でごく一部のガラスに適用できるだけである。
 そこで、分子配列構造が同一となる組成範囲を前提に三成分から成る酸化物系ガラスについて各物性別に重回帰解析を行うことにより、各種の物性について組成値・物性値間の理論関係式の新たな導出を目指す。また、この解析作業を通して理論値から外れたデータを見直すことにより誤入力データ等を抽出する。
C 信頼度別区分けツールの開発(ニューガラスフォーラム)
 収録データを信頼度別に5段階に区分けするためのツールを開発する。
区分けは、理論面、記載内容、組成面、過去の実績などをもとに、専門家等が介在することにより行う。
D 高信頼化データベースの開発(ニューガラスフォーラム)
 データベースは、データ面およびシステム面の両面で高い信頼性が確保されてはじめて多くのユーザに継続的に活用され存続できる。この両面から飛躍的に信頼性を高めたデータベースの開発を行う。
 求められる信頼性はユーザ側の使途により様々であり、新材料の研究開発においては収録されたデータに誤りがなく正確であることや測定条件・熱処理条件等の必要事項が記載されていることなどが重要であり、特許調査においては重要な実施例が漏れなく収録されていることが物性値自体の正確さよりも重要となる。どのユーザに対しても満足できるレベルのデータを提供するには、信頼度別に区分けされたデータをユーザが自由に選別して利用できることが重要である。システムに求められる信頼性もやはりユーザ側の使途により異なるが、頼られるデータベースであることが重要であり、データの豊富さ、応答の速さ、手軽さ、機密漏洩のないこと、ウィルス汚染等の心配のないことなどが求められる。
E ガラス物性データの調査研究(ニューガラスフォーラム)
 ニューガラスの材料設計機能を強化するためのキーワード・特性等の見直しおよび拡大すべきデータ収集対象を明確化することを目的に、海外文献調査を中心とした調査研究を行う。従来から継続的なデータ収集対象としてきた15種類の文献・資料(主要ガラス学術誌12誌と日・米・欧の特許)に加え多種類の文献について調査研究を進め、今後収集すべき対象を選定するとともに、追加・改善すべきキーワード・特性を明確化する。
F データベース推進委員会の開催
 ガラス研究者、ガラス製品開発者、ガラスデータベース利用者等の有識者から構成されたデータベース推進委員会を設置して本研究開発の推進に関する協力と助言を得ることにより、効率的な研究開発の推進を図る。
研究開発計画
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