001 ガラス内部に極小IT素子 京大教授ら新生成法開発 朝日新聞 2002.1.1

朝日新聞(01/01 11:51)【科学・自然ニュース】

ガラス内部に極小IT素子 京大教授ら新生成法開発

 ガラスに特殊なレーザーをあてるだけで、ガラス内部の狙った場所にシリコン単結晶を作る方法を、京都大の平尾一之教授(材料化学)と三浦清貴研究員が開発した。シリコン単結晶は、IT(情報技術)機器の心臓部である半導体素子や、次世代の光通信素子などに使われる基幹物質。ガラスを使った超小型IT部品の実現に大きく前進した。
 普通の半導体素子や光通信素子は、シリコンやガラスの基板の表面を微細加工して作る。立体的な回路を作るのが難しく、小型化が限界に近い。この新手法だと、簡単に立体回路にできる。
 かぎは「フェムト秒レーザー」。1平方センチあたり1兆ワット以上のエネルギーを持つレーザーを、10兆分の1秒間ずつ繰り返し発光させ、ガラス内部の一点にあてる。すると、ガラス自体は壊れず、分子レベルの結合だけが壊れ、ガラスの主成分の二酸化ケイ素が酸素とシリコン(ケイ素)に分かれる。
 発光間隔などが異なる二つのレーザーを同時にあてると、シリコン原子が規則正しく並ぶ単結晶になった。レーザーの条件を変えると、球状や角形で、直径や長さが1ナノメートル(ナノは10億分の1)から1ミリまでの単結晶ができた。
 ガラスに不純物を加えると、単結晶が、電子部品に欠かせないP型やN型の半導体になった。単結晶を微細加工すれば、次世代の光通信素子「フォトニック結晶」も作れる。
 同じレーザーを使って、ガラス内部に、太さ2マイクロメートル(マイクロは100万分の1)ほどの光の通り道を作ったり、ガラスに金を混ぜて金の導線を描いたりする技術も開発済み。こうした「配線」で素子を接続すれば、ガラスの中で光と電気の回路を組み合わせることができる。
(01/01 11:51)
BACK