若手懇談会>前回の講演会
108回講演会報告について 第108回若手懇談会開催報告
[講演]]「比較的長く頭から離れなかった研究課題・ガラスと水」 野上先生はゾルゲル法を用いたガラス開発に長年携わってこられました。今回、プロトン伝導ガラス、スペクトルホールバーニングガラス、機能性ドープガラスを題材とし、ガラスと水の関係についての研究内容をご講演頂きました。先生は低温型燃料電池用電解質として利用されているナフィオンを上回るプロトン伝導度のガラスを開発されましたが、その伝導メカニズムにおいてはゾルゲル法で短所とされる多孔質性、含水率の高さが逆に利点となっているとのことで、欠点は利点にもなりうるのだと非常に感心させられました。また御講演の最後に、日本の研究環境は流行に流されやすく、基礎的なこと続けるのがややおろそかになっているのではないかと懸念されていることを話され、ひとつの事を続けることの大切さ、難しさについて考えさせられました。 [講演]「ガラスの研究40年−結晶化、広い温度範囲の粘度、密度の測定そして廃棄物処理用ガラス、フッ化水素に溶けないガラス−」 松下先生が従事してこられた研究の歴史について、当時の思い出話も交えながらご紹介頂きました。内容はLi2O-SiO2ガラスの結晶化、混合アルカリ効果、ガラスの光弾性効果、広範囲での粘度・密度測定方法の研究、HFに強いガラスの開発、環境問題とガラスと非常に多岐にわたりました。中でも、ガラスの光弾性効果の大小については化学結合性(電子分布の変形の有無)に依存することを、当時の定説にとらわれず突き止めたことを熱心に話されており、何事も鵜呑みにしすぎないことの重要性を再認識させていただきました。先生は現在、環境問題とガラスの分野でも特に再生可能エネルギー関連に非常に興味を持たれており、これからの成長産業として期待されているとのことです。 [講演]「ものつくりと材料研究」 優れた機器の製造のためには、優れた材料の開発が不可欠である。山根先生には、材料が関連するものつくり産業の代表的な成功例である"光ファイバー"の開発を事例とし、新素材のシーズ発掘から製品化にまで到達させるための重要な要素について御講演いただきました。要素の1つ目は異分野の研究者間の連携(シーズ発掘とプロセッシング開発)、2つ目は性能向上を図る上での問題判断(サイエンスorエンジニアリングの問題どちらなのか)、3つ目はコスト低減より材料特性を優先させること(コスト低減はエンジニアリング的問題であり、工夫・努力で最終的に解決可能である)とのこと。特に3番目の品質優先については強調してお話しいただき、今後も日本の企業が生き残っていくのに絶対譲ってはならない点であると再確認しました。 今回は毎年恒例となりました「大先輩に学ぶ」をテーマにご講演いただきました。先生方の研究の歴史だけでなく、研究に対する姿勢・思想などもおりまぜて御講演いただき、若手研究者・技術者にとって今後の参考となる大変貴重な講演となりました。また今回ご講演頂きました3人の先生方ならびに参加者の皆様には講演後の懇親会にもご参加頂き、本会を盛り上げて頂きました。この場を借りて感謝させていただきます。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。 以上 |
講演会アンケート結果 | 過去の講演会 |