若手懇談会前回の講演会
117回講演会報告について


第117回若手懇談会開催報告

【日時】2015年3月6日(金)13時55分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】これからのガラス-新規用途・未利用領域-

[講演1]「江戸っ子1号とガラス球の開発」
      岡本硝子(株) 高橋 弘 先生

 中小企業、大学、研究機関、金融機関が一体となって作製した深海探査機「江戸っ子1号」のプロジェクトについてご講演いただきました。江戸っ子1号に搭載されるガラス球は耐圧容器と浮力体として使用されます。ガラス球は半球と半球を合わせて作られますが、深海では大きな圧力がガラス球にかかり、合わせ面(赤道面)から割れることが問題になっていました。そこで、赤道面にかかる圧力を解析し、製造方法を改善することで解決したそうです。現在、日本近海の探索を江戸っ子1号で行う計画が本格的に進んでいるとのことで、本プロジェクトが産学官金連携の成功例であることを強く感じました。 高橋先生ご講演



[講演2]「熱音響デバイスに関する研究」
         東海大学 長谷川 真也 先生

 蓄熱器と呼ばれる物体に温度差を発生させると音波が発生します(熱音響)。熱音響デバイスは、この音波を利用して冷却や発電を行います。ご講演は、熱音響の基礎から熱音響デバイスへの応用まで幅広く行っていただきました。先生は、デバイスの構造を最適化することで、今まで不可能だった150℃程度の熱源から-40℃の冷凍を実現されたとのことです。現在、蓄熱器にはハニカムセラミックを用いていますが、「孔の径が0.1mm以下であること」「開孔率が80%程度であること」「熱伝導率が低いこと」という条件を満たした物質であればセラミックでなくてもよいとのことなので、蓄熱器にガラスが使用できる可能性を感じました。また、熱音響デバイスの効率が実用レベルになったのは1999年と比較的最近のことであるという説明をいただき、このデバイス自身の可能性についても強く感じました。 長谷川先生ご講演



[講演3]「放射線計測におけるガラス」
      九州工業大学 柳田 健之 先生

 放射線計測、シンチレーター、ドシメーターの基礎から、ガラスシンチレーター、ガラスドシメーターに関するご講演をしていただきました。シンチレーターは医療や資源探索など、様々な分野で使用されていますが、中性子を測定できるシンチレーターの材料はガラスしか用いられていないそうです。その他の放射線測定には結晶が用いられていますが、結晶の特性を上回るガラスが見つかれば、代替できる可能性は十分にあるとのことでした。また、放射線計測用のガラスはまだ十分に探索されていないとのことなので、ガラスの研究者としては研究意欲をかり立てられる内容の講演でした。 柳田先生ご講演



 今回、「新規用途・未利用領域」をテーマに、比較的新しい研究内容についてのご講演を行っていただきました。参加者の方からも質問を多くいただき、活発な議論が行われました。本会を良い交流の場、情報交換の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2015年3月20日
若手懇談会 副会長
池尻純一、山本陽介




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