若手懇談会前回の講演会
121回講演会報告について


第121回若手懇談会開催報告

【日時】2016年3月11日(金)13時40分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】ガラスを多角的にみる−ガラスの課題−

[講演1]「材料化学の観点からみた酸化セリウム研磨材の現状と今後の展望」
         静岡大学 教授 須田聖一 先生

 ガラスの研磨材としてよく使用される酸化セリウムの研磨メカニズムと新規研磨材の開発についてご講演いただきました。La固溶体であることから存在するCe3+が電気化学的反応によりガラス表面を除去する化学的研磨と、機械的研磨の双方のバランスで研磨が進行するメカニズムを紹介いただきました。また化学的研磨可能なSrZrO3と機械的研磨可能なZrO2のナノ複合体で酸化セリウムを超える研磨材の開発へ挑戦されている例を紹介いただきました。ガラス研磨には、酸化セリウムは唯一無二の材料である状況を打破するためにも、このような代替材料への取り組みの必要性を強く感じ、ガラスの加工技術への応用と益々の発展が期待されるご講演でした。 須田先生ご講演



[講演2]「シリカナノ粒子を用いた機能性透明シリカガラスの作製と物性」
         九州大学 教授 藤野 茂 先生

 従来溶融・成形には高温が必要であるために非常に高価であるシリカガラスを、異なる常温のプロセスで作製に成功した成果についてご講演いただきました。フュームドシリカをPVA(ポリビニルアルコール)に所定濃度、pHで分散させると乾燥・焼成後も割れ無く、従来の粉末法で必要な1600℃に対し低温の1200℃の焼成でバルクのシリカガラスが得られるとのことです。焼成前にプリントすれば微細加工でき、金属(金)のドープも可能とのことです。”常温にて成形可能なガラス製造を目指して!!”をコンセプトに掲げておられ、特性の優れたシリカガラスをより安価に手軽に使用できるようにとの熱意を強く感じるご講演でした。 藤野先生ご講演



[講演3]「ガラスの原料資源と地球科学」
      秋田大学 准教授 菅原 透 先生

 ガラスの原材料となる酸化物資源鉱物の成り立ちを地球科学・歴史の観点からご講演いただきました。珪砂源となる花崗岩は、プレートの沈み込みと初期マグマの発生から結晶分化を繰り返すことで形成され、風化した花崗岩が湖や海に堆積する形でシリカが地表に濃集したとのことでした。その他、アルミナ源となるペグマタイトやネフェリンサイアナイト、地球のCO2サイクルに大きく関係する石灰石、蒸発岩で形成されるソーダ源、ホウ素源、リチウム源に至るまで、ガラスの主成分を担う資源が地表付近に分布している現状がダイナミックな地球活動の上に成り立ち我々ガラス産業界が支えられていることを改めて認識することができ、大変興味深いご講演でした。 菅原先生ご講演



 今回、「ガラスの課題」というテーマで、加工研磨、製造プロセス、原材料といった様々な面において求められる開発項目についてご講演いただきました。参加者の方からも質問を多くいただき、活発な議論が行われました。本会を良い交流の場、情報交換の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2016年4月1日
若手懇談会 副会長
宮部大亮、矢倉拓海




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