若手懇談会前回の講演会
122回講演会報告について


第122回若手懇談会開催報告

【日時】2016年5月20日(金)13時30分〜17時10分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】大先輩に学ぶ

[講演1]「ガラスへの機能付加の試み」
         物質・材料研究機構 井上 悟 先生

 コンビナトリアルケミストリーの手法を用いた組成探索についてご紹介いただきました。ガラス磁気ディスク用を想定した、遷移金属や希土類を含む高ヤング率、高硬度かつ低融点のガラス組成について紹介いただきました。身近な成分および原材料を用いた全く新しい組成を高効率に開発する手法の提案は非常に参考になるものでした。また、陽極酸化法を用いて形成する緻密な微細ナノポーラス構造についてご紹介いただきました。ガラス基板上に形成した透明導電膜まで貫通した10〜100 nmの均一な細孔を、大面積に効率的に形成できる画期的な手法でした。酸の種類を選択することで細孔サイズを制御可能で、細孔にNi金属やFe-Pt合金を導入すれば高密度磁気記憶媒体として、TiO2を導入すれば反応率の高い新規光触媒デバイスなど、様々なデバイスへ応用できる可能性があるとのことです。また、交流電源を用いることで層構造のアルミナ薄膜層が得られるとのことです。プロセスに工夫を加えることで多彩な構造を付与できる点で興味深く拝聴しました。 井上先生ご講演



[講演2]「バイオシリカ形成における有機物の役割」
         鳥取大学 清水 克彦 先生

 シリカを骨格に持つ珪藻類や海綿動物についてご紹介いただきました。海綿動物の針骨はアモルファスシリカで非常に緻密に構成されており、微視的にはシリカ層と有機層(たんぱく質層)の層状構造体であることから、単一のシリカガラスファイバーに比べて曲げや引っ張りに強い特徴があるとのことです。このシリカ複合繊維が構成されるプロセスは完全には明らかになっていないものの、海水中に含まれる微量のモノケイ酸を海綿動物の体内プロセスにより濃縮・重合することで、効率的に形成されるとのことです。有機と無機のハイブリッドにより、単一材料では獲得できない特性が付与される事例として、材料開発の面からも大変示唆に富むお話でした。ご講演の中では、実際の珪藻土やカイロウドウケツの骨格サンプルなどを回覧いただき、大変わかりやすく説明いただきました。 清水先生ご講演



[講演3]「ガラスに光を閉じ込める」
      東京工業大学 名誉教授 柴田 修一 先生

 多成分系ガラスの光ファイバーや、ゾルゲル法によるプリフォーム製造法など、実際の光ファイバー組成やその製造法開発のご経験について、光ファイバーの仕組みや光損失に関する原理的説明と合わせて平易な表現で分かりやすくご教授いただきました。シリカ単一組成のファイバーが主流となり、またVAD法での低損失ファイバーの登場により、いずれの技術も結果的に製品には結びつかなかったものですが、その開発経緯を通して、自ら設計した装置を用いてデータを取ることの意義や、上司とのつきつめた議論の重要性など、若手研究員に求められる点を数多く教えられたような気がいたしました。また、上記に加えて赤外域での低損失フッ化物ガラスの開発や微小球光共振器についてもご紹介いただきました。地球の電離層と短波との類似性を用いた微小球光共振器の原理の説明は非常に分かりやすく、また共通の科学的原理で種々の事象を理解する姿勢には学ぶべき点を多く感じました。 柴田先生ご講演



 今回、「大先輩に学ぶ」というテーマで、先生のご経験を中心にその背景も含めて概説いただき、また若手へのメッセージ等も多く教示いただき、大変励みに感じた会になったと思います。本会を大先輩との良い交流の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2016年6月1日
若手懇談会 副会長
宮部大亮、矢倉拓海




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