若手懇談会前回の講演会
123回講演会報告について


第123回若手懇談会開催報告

【日時】2016年7月15日(金)12時00分〜17時50分
【場所】つくば研究支援センター
【テーマ】ガラス、その他材料と宇宙との関わり

[見学会] 宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター
         

 宇宙技術に関する総合研究施設であるJAXAの筑波宇宙センターを見学しました。自由見学施設では、H-IIロケット実機や、原寸大の宇宙実験棟「きぼう」などを見学しました。一般見学コースの宇宙飛行士養成施設では、実際のトレーニング設備、衛星試験棟保管庫では衛星の実機などの展示を見学しました。また、今回ご講演いただいたJAXA石川先生のラボを案内いただきました。静電浮遊法による物性測定方法を開発されている実際の研究現場では、実際に帯電したアルミ球がローレンツ力により炉内で浮遊している様子を見学させていただきました。また、宇宙ステーションに搭載される実機の紹介とともに、無重力における物性測定の利点や、測定比較例がないことから生じるデータの精度評価の難しさなど、種々解説いただきました。



[講演1]「静電浮遊法を用いた高温融体の熱物性計測について」
         JAXA/ISAS 石川 毅彦 先生

 高温の物性測定が可能な無容器法の中でも、特に外乱に強い静電浮遊法による高精度の熱物性測定について紹介いただきました。タングステン等の3000℃以上での密度・表面張力および粘度など、世界初の測定に成功されたとのことです。また、得られた高温での物性データを鋳造成形シミュレーションに利用することにより、航空機タービンブレードなどの鋳造プロセスの発展に役立てられているとのことです。地上では測定物質の浮遊制御に高電圧の印加が必要で、その放電を防ぐためには高真空か加圧が必要となるとのことですが、宇宙の微小重力環境では小さな電圧でも可能となることから、高真空では蒸発により組成の変化する合金や、帯電しにくい酸化物の物性の測定・評価も可能となります。宇宙での測定・評価により、今後ますます技術発展に対する貢献が期待されるとのことです。 石川先生ご講演



[講演2]「航空宇宙システム用超耐熱複合材料とその応用について」
      東京農工大学 小笠原 俊夫 先生

 航空機用ターボファンエンジン部品や、人工衛星の姿勢制御スラスタ燃焼器などに使用される、SiC繊維SiCマトリクス(SiC/SiC)複合材料について概説いただきました。SiC繊維は世界に先駆けて日本で商品化された独自技術であり、これを強化材とするSiC/SiC複合材料はセラミックスや耐熱金属に比べて軽量、高強度かつ高耐熱な優れた材料です。現在、欧米のエンジンメーカーにより、航空エンジンのシュラウドやタービンブレード用部材として実用化直前という段階まできているとのことです。 SiC/SiC複合材料の優れた力学特性、耐久性、耐熱性を付与するためにはCVD法等によって繊維表面にBN等の界面相を形成することが重要のようです。国内では欧米のエンジンメーカーと比較すると若干、耐熱性は劣りますが、非晶質繊維を用いることで低コストでかつ必要強度を満たす低圧タービン用材料が開発されているとのことです。単体では実現できない複合材料の利点を生かして、今後とも様々な極限条件に耐える材料が開発されることが期待されるとの印象を受けました。 小笠原先生ご講演



 今回、宇宙をテーマにした材料に関するご講演を拝聴し、材料物性の新規測定方法や新規材料開発の紹介から、新たな可能性を感じられ、研究開発を志す者にとっては大変有意義な見学会・講演会だったと思いました。このような幅広い知識・知見を得ることができるのも本セミナーの特徴と思いますので、今後とも是非NGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2016年8月1日
若手懇談会 副会長
宮部大亮、矢倉拓海




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