若手懇談会前回の講演会
131回講演会・見学会報告について


第131回若手懇談会開催報告

【日時】2018年7月6日(金)14時00分〜17時30分
【場所】国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横須賀本部
【テーマ】深海探査を支えるガラス技術

[講演1]「超深海用セラミック耐圧容器について」
      海洋工学センター海洋戦略技術研究開発部 探査機運用技術研究開発グループ 前田洋作(マエダ ヨウサク) 先生

 海中で使用する探査機や観測装置においては海水の侵入及び水圧から電子機器・電池等を守るため耐圧容器が用いられています。この耐圧容器には@強大な水圧に耐えることA腐食に強いことB正味浮力を稼げる(自己浮上できる)ことが求められ、それらを実現できる材料として窒化珪素やアルミナセラミックスを使用した実例を紹介頂きました。円筒型耐圧容器では課題である端面の応力集中による割れをアルミ合金蓋を併用することで緩和し、軽量(半分程度)で低コストの耐圧容器を実現されました。今年度実用化の予定があるとのことで海洋探査への大きな貢献が期待できると感じました。

前田先生ご講演



[講演2]「環境影響調査に用いる長期モニタリングを行うための江戸っ子1号の活用」
      海洋工学センター海洋基幹技術研究部 計測・複合技術研究グループ グループリーダー 三輪 哲也(ミワ テツヤ)先生

 深海の環境調査等を低コストで実施可能なフリーフォール型無人探査機「江戸っ子1号」の活用状況についてご説明いただきました。江戸っ子1号にはフロートとしての役割とともに、機器を格納する容器としてガラス球が3個一体で使用されています。低コストで軽量という基本コンセプトで開発が進められ、マルチアングルカメラを搭載することで海底の環境変動等の観察が可能となっています。現在では半年〜1年程の長期観察が可能とのことですが繰り返し使用することでガラス球の赤道内面への応力集中による剥離が発生する問題もあり、部分的アニール等の改善策を検討されているとのことでした。地上と同様、深海においても環境変動は大きく長期的なモニタリングが必要とされています。今後の更なる技術開発と「江戸っ子1号」を展開していこうとする熱意を感じるご講演でした。

三輪先生ご講演



[見学会]

 無人探査機「かいこう」、深海巡航探査機「うらしま」、高圧実験水槽等の見学をさせて頂きました。「かいこう」の特徴としては重いケーブルの自重を受けるためのランチャーと調査を行うビークルに分かれている構造でマイクロ中空ガラスをエポキシ樹脂で固めた浮力材を使用しているとのことでした。「うらしま」は世界最大規模の自立型無人探査機で広域な調査が可能、音響マッピングによる海底の微細地形図の作成に活躍しているとのことでした。広大な海洋の観測や探査などを効率的・効果的に進めるために活躍しております。
     
見学会集合写真



 今回、「深海探査を支えるガラス技術」をテーマに、見学会では探査機、高圧実験水槽の見学を行い、講演会では超深海用セラミック耐圧容器、フリーフォール型無人探査機「江戸っ子1号」に関するご講演を行っていただきました。さらに、講演会では参加者の方からも質問を多くいただき、活発な議論が行われました。本会を良い交流の場、情報交換の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2018年7月12日 NGF若手懇談会 副会長 北原 倫太郎、川出 剛

 


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