若手懇談会前回の講演会
134回講演会報告について


第134回若手懇談会開催報告

【日時】2019年5月17日(金)13時00分〜18時45分
【場所】日本ガラス工業センター
【テーマ】ガラスの新たな可能性 −ガラスの新規用途−

[講演1]「回折法と構造モデルを用いた解析」
       東京大学 井上 博之(イノウエ ヒロユキ)先生

イオン性の高いガラスや、オキシフルオライドガラスを題材に回折法を用いた構造解析についてご講演いただきました。
はじめにZachariasenのガラス形成則など、基礎的な構造則、構造モデルについてご説明いただき、 次にガス浮遊炉を用いた無容器法によってランタン、チタン、バリウムなど組み合わせたガラスを作製し、 屈折率2.4というダイヤモンドに近い特性のガラスが得られたことをご紹介いただきました。
このような特異な特性を持つガラスに対し、SPring-8での測定を実施し、3次元構造モデルを適用することで構造解析を可能にしたとのことです。
また、オキシフルオライドガラスに適切な熱処理を施すことで、フッ化物の結晶が析出するという興味深い事例についても言及いただきました。 一部の原子レベルの構造モデルでは電子状態の計算も可能であるということで、今後の応用研究への展開が楽しみなご講演でした。  

先生ご講演



[講演2]「ガラスの化学強化と構造」
      AGC株式会社 今北 健二(イマキタ ケンジ)先生

ガラスの高強度化手法として盛んに開発が行われている化学強化技術についてご講演いただきました。 ガラスの破壊メカニズム、イオン交換による化学強化技術の原理の基礎より始まり、高強度なガラス組成の設計指針についてご説明いただきました。 傷つきにくいガラスにするには、モル体積が大きく、変形を許容できる空間が大きいガラス組成であること、化学強化による応力が入りやすいガラスとするためにはアルミナとアルカリの量が重要なことについて解説いただきました。 最後に、最新の化学強化ガラスであるDragontrail™ Proでは、表面圧縮応力940MPa、平均曲げ半径2.8mmが実現できており、近年話題のフォルダブルデバイスに適用可能である点について言及いただき、非常に興味深いご講演でした。

先生ご講演



[講演3]「多孔質層形成による、ガラス表面への超親水性およびAR性付与」
      東京都市大学 藤間 卓也(フジマ タクヤ) 先生

 ガラス表面への多孔質層形成による超親水性、AR性の付与ついてご講演いただきました。開発された階層性ナノ多孔層(HNL)ガラスは、孔径20〜30nmのスポンジ状構造を持ったものであり、ガラス板表面から内部かけて、徐々に孔径が小さくなるような構造を有しているとのことです。HNLガラスは、微粒子の積層、高分子などのテンプレート成形によって作製される例が多く、板材などへの大面積処理が困難であるという課題がありました。この課題に対し、提案手法では亜臨界状態のNaHCO3などのアルカリ水溶液に浸漬することで、簡単かつ低コストにHNLガラスを作製可能な技術となっており、大面積化にも対応可能とのことです。このガラス表面に形成されたスポンジ状構造により、超親水性、AR性、防汚性、防曇性等多くの効果が発現されるということで、ガラス製品への適用が待ち遠しい講演でした。
     
先生ご講演



 今回、「ガラスの構造と用途」というテーマでご講演頂きました。 身近な製品に利用されている技術や、これからの発展が望まれる技術など興味深い講演を拝聴でき、大変勉強になる会となりました。また、本会を良い交流の場としてご活用いただきましたことに感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。

以上

2019年5月28日 NGF若手懇談会 副会長 池田 拓朗、藤原 卓磨

 


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