若手懇談会前回の講演会
第140回講演会報告

第140回若手懇談会開催報告

【日時】2020年10月9日(月)13時50分〜16時15分
【場所】Microsoft Teams を使用したWeb開催
【テーマ】材料技術のビジネス戦略

[講演1]「B5G時代に向けたRadio-over-Fiber (RoF) ベースモバイルフロントホール」

株式会社 KDDI総合研究所 光アクセスネットワークグループ 所属 西村 公佐(ニシムラ コウスケ) 先生

 5G時代に向けた無線通信ネットワークについてご講演いただきました。 無線通信の伝送速度は、有線光通信とほぼ同じ速度かそれ以上になることが予想されていて、無線基地局〜アンテナまでの光通信(MFH: Mobile Front Haul)への負荷が大きくなることが課題とのことで、無線信号に変調/復調する装置であるBBU(Baseband Unit)の機能を分割することでその負荷を低減する技術が検討されているとのことでした。  A-RoF(Analog Radio-over-Fiber)は、無線信号の波形を光でアナログ伝送する技術で、信号帯域幅が小さくなるため、高い周波数利用効率が得られ、また構成がシンプル化できることなどが利点とのことでした。このA-RoFと、複数のA-RoFチャネルを周波数多重化したIFoF(Intermediate Frequency-over-Fiber)とのハイブリッドにより、27Gbpsのユーザー容量と3.2bps/Hzの高い伝送効率の実現をご報告いただきました。また、Beyond 5G時代への通信容量拡大に向けては、現状のデバイス性能でも波長多重技術や空間多重技術の組合せによるlane数増加だけでも1Tbpsクラスの容量を達成可能との見解を示されました。また、近年注目されているマルチコアファイバの利用の可能性についても言及いただきました。 5Gでは「高速・大容量」「多接続」「低遅延」という3つの特徴が挙げられていますが、4Gまでの技術革新に比べると「低遅延」への注目が高くなり、自動運転、遠隔医療など「大容量」と「低遅延」を組み合わせたアプリケーションが増えていくとのことでした。 今後の通信環境の発展が楽しみになると共に、今後のビジネス環境への影響を注目したいご講演でした。




[講演2]「ファインセラミックスの技術戦略・技術経営2020」

筑波大学 数理物質系 物質工学域 准教授 鈴木 義和(スズキ ヨシカズ) 先生

 ファインセラミックス分野で今ホットなトピックスや戦略イメージ、およびデータサイエンスの活用についてご講演いただきました。  最近のファインセラミックス分野でのトピックスとしては、Web of Science databaseを利用した論文の引用数から、「3Dプリンティング」「フラッシュ焼成」「ハイエントロピーセラミックス」「低温・室温合成」「焼かないセラミックス」「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」を上げていただきました。  次に、業界全体の戦略を紹介いただきました。2018年頃からはSDGsへの取り組みが盛り込まれ、環境や医療分野への活動がいっそう広がっていくとのことでした。基盤科学・プロセス分野では早い時期での3D造形の実用化が目指されており、開発がよりいっそう推進されるだろうとのことでした。さらに、進行中のプロジェクトに関しても、3D造形技術の他、MIやデジタルデータの活用がキーとなっていることを紹介していただきました。  ファインセラミックス分野でのデータサイエンスの活用については、まだ専門誌に掲載され始めた段階とのことです。元素や化合物に依存する性質については機械学習させやすい一方で、強度や靭性などの微細組織に影響される特性に関しては予測が難しいとのことでした。  ファインセラミックス分野においても、ニューガラス分野にも通じる技術課題があることが良くわかるご講演でした。




[講演3]「データサイエンスが先導するオープンイノベーション:高分子分野を中心に」

国立研究開発法人物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点  フロンティア分子グループ グループリーダー、理事長特別補佐 中西 尚志(ナカニシ タカシ) 先生

 NIMSでのデータサイエンスへの取り組みについて、高分分子のデータベース「PoLyInfo」の例を通してご講演いただきました。 論文等からのデータの収集は、AI技術を利用して迅速化が図られており、質を高めるために抽出技術の向上に取り組まれているとのことでした。サンプルの作製プロセスの情報までを自動で抽出できる技術も開発する必要があるそうです。また、データを作る取り組みとして、実験データの自動収集/自動解析の活動や、AIやロボット技術を活用して実験や研究のスピード化を図るスマートラボラトリーの活動事例についても言及いただきました。 これらのデータは、MIを用いた材料の性能予測に活用されているとのことです。直接材料提案までするには作製プロセス〜構造〜特性〜性能といった多段階を一気通貫で予測する必要がありますが、そこがMIの難しい点とのことでした。 NIMSでは材料のデータを作り、貯めて、使う、データプラットフォームを構築しており、材料開発の共同研究を率先的に推進しているとのことで、研究事例を紹介いただきました。また、先生のご研究である、エレクトロニクス・ヘルスケアに応用可能な高分子材料の研究についてもご紹介いただきました。  先生がおっしゃる通り、データサイエンスへの取り組みは、技術というよりもビジネスとして重要であることが良くわかるご講演でした。






今回「材料技術のビジネス戦略」というテーマでご講演頂きました。業界のビジネス戦略やその動向から、今後のビジネスを左右するデータサイエンスへの取り組み、更には我々の生活とビジネス環境を大きく変化させる可能性がある5G以降の技術に至るまで幅広い講演を聴講でき、大変勉強になる会になりました。ご講演いただきました先生方に感謝いたします。また、今回は初めてのweb開催となり、本会の目的の一つである交流までできなかったことは残念に思いますが、無事に終了することができました。準備を進めていただいた皆様に感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願い致します。


以上

2020年10月9日 NGF若手懇談会 副会長 平川 圭祐
副会長 佐藤 良司

 

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