若手懇談会前回の講演会
第145回講演会報告

第145回若手懇談会開催報告

【日時】2022年5月16日(月)14時00分〜17時20分
【場所】Microsoft Teams を使用したWeb開催
【テーマ】SDGsとガラス

[講演1]「カーボンニュートラルに向けた二酸化炭素排出削減の対応策」

(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
システム研究グループリーダー主席研究員
秋元圭吾(アキモトケイゴ) 先生

CO2排出量について、経済成長との関係や内訳、世界各国との対比などを解説頂いた後、再生可能エネルギー、蓄電池、水素、CCUS、DAC、原子力といったカーボンニュートラルに向けた各種技術の役割と課題、日本の2050年カーボンニュートラルに向けた定量的な分析シナリオについてご紹介頂いた。日本では比較的エネルギーが手に入りにくく、平地が少ないため再生可能エネルギーも建設コストが高額になりがちで大幅な拡大が困難な状況で、経済性との両立を考慮すると余計に上記他の多様な技術の利用が重要である。それぞれの技術についてインフラや規模など課題を認識し、上手く選択して併用していく必要があるとのことだった。カーボンニュートラルの全体像を体系的に学べるだけではなく、現実的なエネルギー転換やCO2排出量削減対策を考える指針を示して頂いたご講演でした。  




[講演2]「酸素燃焼によるCO2 削減」

大陽日酸株式会社
技術開発ユニット開発企画統括部開発企画部長
萩原義之(ハギハラヨシユキ) 先生

工業炉のCO2排出量削減において重要な酸素燃焼、およびそれと組み合わせた水素燃焼やアンモニア燃焼の技術的課題について、大陽日酸社の実証テストや導入の事例も交えてご紹介頂いた。空気燃焼に比べて酸素燃焼には、火炎温度の上昇、燃焼速度の上昇、高温火炎によるラジカルの生成、排ガス量の減少といった技術的特徴があり、いずれも伝熱効率の向上に寄与するとのことであった。また水素燃焼では化石燃料使用時のように火炎の輝度が高くない、アンモニア燃焼ではNOxが発生しやすいという課題があったが、大陽日酸社の技術で酸素燃焼/酸素富化燃焼との組み合わせや、更にステージング燃焼を組合わせる事で、いずれにおいても温度分布を保ち、後者においてはNOxを規制値以下に抑えられたとのことであった。ガラス製造と密接な燃焼においてCO2排出量削減は非常に難しい印象でしたが、先生のお話で実現性を感じることができました。




[講演3]「CCUSの動向と東芝の取り組み」

東芝エネルギーシステムズ株式会社
パワーシステム事業部新規事業開発部シニアマネジャー
鈴木健介(スズキケンスケ) 先生

大気に排出される前にCO2を分離・回収して、再利用する技術(CCU)および地中に固定する技術(CCS)について概説頂いた後、東芝エネルギーシステムズ社のCCUS(CCU+CCS)設備の実証テストや導入の事例をご紹介頂いた。CO2発生量は需要に対して著しく大きく、CCUだけではカーボンニュートラルを達成することはできないためCCSも重要であり、エネルギー転換、産業といった部門の規模によって上手く適用していく必要があるとのことであった。またCO2分離回収に様々な方式がある中で、東芝エネルギーシステムズ社では、常圧で低濃度のCO2を高純度で回収できる、アミンによる化学吸収を選択しているとのことだった。CCUSについて理解を深めることができ、ガラス製造においてエネルギー転換では解決できない原料由来のCO2排出について、解決の可能性を大いに感じることができました。






今回「SDGsとガラス」というテーマでご講演頂きました。カーボンニュートラルについて俯瞰的かつ、日本やガラス製造業界の位置付けを理解しやすい形で、基礎的な内容から最先端の実証、導入事例も併せて丁寧にご説明頂き、ガラス製造だけではなく、エネルギー生産および消費に関わる方にとっても非常に価値のある講演でした。ご講演頂きました先生方に感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願いします。


以上

2022年5月16日 NGF若手懇談会 副会長 小西 和明、佐藤 良司

 

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