若手懇談会前回の講演会
第147回講演会報告

第147回若手懇談会開催報告

【日時】2022年10月19日(水)14時00分〜17時30分
【場所】Microsoft Teams を使用したWeb開催
【テーマ】「IYOG2022国際ガラス年特別講演会」異業種・異分野から見たガラスの可能性−ガラスを用いた次世代材料と製品−

[講演1]「ガラスを用いた全固体二次電池向け固体電解質の開発」

株式会社オハラ 材料生産センター
研究開発部 素材研究課 主任
小笠 和仁(オガサ カズヒト) 先生

まずオハラ社で製造されているリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGC、次に酸化物系全固体リチウムイオン二次電池、最後に固体電解質用焼結助剤、負極用および正極用固体電解質の開発についてご紹介頂いた。LICGCはLi1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12もしくはLi1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12といったLi置換NASICON型の結晶を主に含み、1×10-4〜1×10-3Scm-1(25℃)といった高いイオン伝導性を示す。酸化物系固体電池を焼結するに当たり、分解反応を抑制しやすいように界面を形成する目的で、低温焼結用リチウムイオン伝導性ガラスLIG-ALを開発された。これを水溶液にして粒子の表面にコート・乾燥すると、さらに低温焼結できる。LICGCはLiを含むものの水には溶けず、加速試験として10日間温水に浸してもイオン伝導性を97%保ったとのお話やLIG-ALは水に溶解した際にpHが7であり、乾燥した後もアモルファス状態を維持するというお話は興味深かった。ガラスメーカーならではの視点での開発事例を紹介頂き、大変勉強になるご講演でした。  




[講演2]「可視光向け平面光波回路技術とそれを用いた小型RGB光源向け波長合波回路」

日本電信電話株式会社 先端集積デバイス研究所
光複合機能集積研究グループ グループリーダ 上席特別研究員
橋本 俊和(ハシモト トシカズ) 先生

光ファイバーの構造や製法、PLC技術について解説頂いた後、網膜投影レーザアイウェア向けPLCについてご紹介頂いた。NTT社ではVAD(Vapor-phase Axial Deposition)法という、材料を気化して垂直方向に下から吹き付けていき光ファイバーの母材を製造する方法を開発した。現在、世界中の光ファイバーの約6割がこの方法で製造されている。PLC技術は光ファイバーの製造技術を利用し、シリコンウエハー上に光の導波回路を形成するというもので、使用するコアは材料を変える訳ではなく、回路の損失、規模、組む要素数に合わせてGe添加率を増減することにより屈折率を変えているとのことであった。網膜に直接点を投影し、それを掃引することで視力が弱い方でも像を見ることができる。NTT社では島状の導波路を用いて3.5mm程度に小型化した光の導波回路を作製し、TDK社と協力してモジュール化することでスマートグラスに適用して動作することを確認できたとのことであった。光ファイバーの基礎的な内容からPLC技術との関係性に至るまで丁寧にお話し頂いたことで理解が深まりました。




[講演3]「GFRPに求められるガラス繊維の役割と性能」

ヤマハ発動機株式会社
技術・研究本部 技術開発統括部 先進プロダクト開発部 基盤技術グループ
近藤 拓(コンドウ タク) 先生

ヤマハ発動機社におけるFRP(繊維強化プラスチック)製品を歴史と共にご紹介頂いた後、FRPに用いる繊維材料の種類と長さ、樹脂の種類、それらを組み合わせた結果の特性や適した工法について、動画も交えながら解説頂いた。また昨今の潮流であるカーボンニュートラル実現に向けたヤマハ発動機社やFRP業界の取り組みをご紹介頂き、ガラス繊維の製造方法やリサイクルに対する期待を共有頂いた。FRP向け強化繊維の市場の中でGF(ガラス繊維)は約8割を占める。また、FRP製小型漁船の製造工程におけるCO2排出量の内、ガラス繊維製造の割合が2割弱を占めているという調査結果もある。GFRPのリサイクルに当たり、分離したガラス繊維の劣化や経済性との両立など多くの課題がある。多様なFRPの中でのGFRPの位置付けを認識でき、ガラス製造におけるCO2排出量の削減やリサイクルの重要性を一層考えさせられるようなご講演でした。






今回はIYOG2022国際ガラス年特別講演会ということで、「異業種・異分野から見たガラスの可能性−ガラスを用いた次世代材料と製品−」というテーマでご講演頂きました。電池、光通信、繊維強化プラスチックといった様々な分野でガラスが関わっていることを認識でき、ガラス業界として新たな視点を得ることができるようなご講演でした。今後より一層連携を深め、新たな価値を創造していければと思います。ご講演頂きました先生方に感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願いします。


以上

2022年10月19日 NGF若手懇談会 副会長 小西 和明、佐藤 良司

 

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