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第156回講演会報告 第156回若手懇談会開催報告
[講演1]「ガラス溶解用貴金属部材の特徴と技術紹介」 田中貴金属工業株式会社 伊勢原工場 製造技術セクション リーダー
田中貴金属工業株式会社の高木先生にご講演頂き、事業内容や製品、技術についての詳細を紹介して頂いた。白金材料の希少性や特性から始まり、ガラス溶解用白金装置として使用した場合の特徴と不具合事例を1.高温クリープ変形や熱膨張による応力変形、2.揮発減耗による板厚減少による強度低下や電気特性の変化、?浸食反応による溶出や合金化反応による強度の著しい低下、3.熱電対の劣化による指示温度の低下、に分類し、原因毎に具体例も交えてご説明頂いた。また、これらの課題に対応したものとして、高温時の変形や耐性を向上させた商品である強化白金材料「nanoplatR」や強化白金熱電対「TEMPLAT」などの材料技術に加え、Pt揮発を抑制するためのZrO2-Y2O3プラズマ溶射や、耐火物表面に白金被膜を溶射形成する技術である「ACT(Advanced Coating Technology)」といった溶射技術についても実例を元にご説明頂いた。強度が低下しやすい溶接部には強化白金の特性を活かしたYT接合と呼ばれる接合技術も取り入れられている。参加者からも各技術の特性や応用方法について質問が多数寄せられた。 [講演2]「ガラス溶解部材(耐火物)」 AGCセラミックス株式会社 開発センター ガラス技術グループ グループリーダー 100年以上の耐火物製造の歴史を持つAGCセラミックス株式会社の井出先生にご講演頂き、耐火物の発展の経緯から電鋳煉瓦・不定形耐火物・結合煉瓦といった分類と特徴を、実際によくガラス窯内で使用される適用例を元にご紹介頂いた。溶解するガラスの組成や製造方法によって最適な耐火物が異なるため、耐火物の設計・選定には組成や製造条件が非常に重要である。具体例として、高温耐性のあるAZS質電鋳煉瓦やアルミナ質電鋳煉瓦は、ビン用途ではフィーダーパーツ等に、フロートではキャナルやリップに用いられている事例や、マグネシウム系煉瓦は、蓄熱室では冷えた際に芒硝が凝集することがあるため、凝集しやすさに合わせて成分を変えて使用している事例の紹介があった。長期使用上課題となる耐火物の損傷についても、温度毎の侵食速度や、マランゴニ対流といった三相界面で生じる事例について実際の写真とともに紹介があった。最後に現在検討が進んでいる酸素燃焼では、燃焼効率が向上する一方、これまで希釈していたN2が減ることで上部構造の耐火物の損傷が懸念される点について問題提起があり、変質の起こりやすいβアルミナ層を低減したαβアルミナ質電鋳煉瓦MB-Cや変質相の生成が少ないジルコニア質電鋳煉瓦ZB-X9510用いることでガラスの品質改善が見込めるとのご紹介があった。各種ガラス会社の溶解・成型方法に絡めたお話しをして頂いたことで、改めて適切な耐火物を選ぶことの重要性を考える機会となった。 [講演3]「ガラス溶解炉の省エネとコストダウン~耐火物を通して~」 株)ジェイテック・テクニカルアドバイザー ニューガラスフォーラム嘱託特別技師
東洋ガラスで数々の炉を設計・使用され、現在はジェイテック・テクニカルアドバイザーとしてご活躍されている佐藤先生にご講演頂き、ガラス量産現場の立場から、ガラス溶解炉で実際に生じた問題や対策方法をご紹介頂いた。また後年に国家プロジェクトとして携わられた気中溶解についても、技術・プロジェクトの概要についてご説明頂いた。 今回は「ガラス溶解部材(耐火物、貴金属)」というテーマで3名の先生方にご講演頂きました。ガラス製造や実験において、貴金属や耐火物といった材料は不可欠です。今回のご講演で材料の種類や特性を実際に使用した場合の実例や課題も含めて広く学ぶことができ、大変勉強になりました。 以上 |
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