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第159回講演会報告 第157回若手懇談会開催報告
[講演1]「ガラス溶融プロセスにおける脱炭素化技術の動向」 一般社団法人ニューガラスフォーラム 研究開発部 部長
GHG(Green House Gas)排出量削減において、国内外の企業や団体が取り組んでいる、ガラス溶融プロセスにおける脱炭素化技術の動向についてご報告頂いた。ガラス溶融時の燃料由来・原料由来(Scope1)、電気溶融に使用する電気の発電由来(Scope2)に対して、板硝子では2030年までにScope 1+2で約30%削減(2017〜2020年比)、びんガラスでは約40~50%削減(2019〜2020年比)の目標を立てている。具体的には、カレット比率アップや全電気溶融炉、電気と燃料のハイブリット炉、非化石燃料(水素、アンモニア、バイオ燃料)を用いた燃焼方法、二酸化炭素を回収し貯留または有効利用する技術(Carbon Capture, Utilization, and Storage:CCUS)などの検討が進められている。 特に水素燃焼は、多くのガラスメーカーが取り組んでいるが、水素比率30%前後で炎の輝度が下がる傾向や、水素の輸送に課題が見られている。また、水素燃焼では雰囲気中の水分が増えることによる、泡層の増加が問題となっており、雰囲気の種類による泡層への影響について、愛媛大を中心に研究が進められている。欧州の企業では水素貯蔵庫の建設等により、水素濃度を100%まで上げた場合の実施試験も進められている。 欧州では、複数企業が参加する共同プロジェクトや独立した研究団体が存在し、業界として脱炭素化に向けた技術開発が進んでいる。特に、欧州の容器メーカーでは、すでに電気比率が50%を超えるハイブリット炉の操業や建設が始まっており、公開情報を見る限りでは最もカーボンニュートラル対応が進んでいる地域である。これは、ハイブリット炉を設計販売するエンジニアリング会社が複数あり、ガラス会社が市販設備を導入することに抵抗がない環境や、政府や団体からの資金援助も活発であることが理由として考えられる。また、これまで100t/D以下の小型炉が中心だった全電気溶融炉も、200t/D規模の稼働計画が進められており、普及の拡大が予想される。加えてエンジニアリング会社はさらなる大型化を検討している模様である。日本のガラス業界がカーボンニュートラルを達成するためには、各社の横のつながりを強化し、情報共有や共同開発を進めることが重要と考えられる。 現在各国・各社で行われている脱炭素化技術への取り組みについて幅広くご紹介頂き、各技術の特徴や、現時点での日本の状況、欧州の進め方・進捗度合いなどを知ることができる、非常に参考になる講演内容でした。日本各社の脱炭素化について、目標値と現状の状況を可視化し、ガラス業界全体で、カーボンニュートラルを促進できるような体制が構築できると望ましいと感じました。 [講演2]「ガラスからの重金属の分離技術」 公立鳥取環境大学環境学部 副学部長、准教授 本講演では、ガラスからの重金属分離技術について、「分相法」、「還元分相法」、「塩化揮発法」の3つの方法を紹介頂いた。「分相法」は、鉛ガラスに分相剤と炭酸ナトリウムを混合して溶解・冷却して得た、分相ガラスを酸処理することで鉛(Pb)を抽出する方法である。この方法では、分相剤と炭酸ナトリウム量を最適化することで選択的にPbを抽出することができる一方で、酸廃液の処理と鉛溶液からの回収・リサイクル技術が必要であるため、湿式処理よりも乾式処理の方が好ましいという課題がある。次に紹介いただいた「還元分相法」は、廃小型家電の電子基板にSiO2と分相材を直接混ぜて溶解し、沈殿するメタル相から、CuやAgといった有用な金属やNiやSbといったレアメタル成分等を分離・回収する方法である。この方法についても残ったガラス層を冷却後に酸処理することで、ガラスと抽出液に分けられ、抽出液からFeやCrといった金属成分を取り出せることが期待される方法である。 「塩化揮発法」は、沸点の低い塩化物で揮発させることで重金属を分離する手法であり、ブラウン管等に使われた鉛を含むファンネルガラスに塩化剤と添加剤を加えて焼成することで、鉛を塩化物として揮発させる事例を紹介いただいた。特にCa(OH)2添加により、鉛の揮発率を向上可能であることをご紹介いただいた。 ガラスの分相特性や各金属元素の化学反応をうまく利用した分離技術についてご教授頂き、ガラスの廃棄物の無害化やリサイクルを考える上で非常に勉強になりました。 [講演3]「AGCにおける板ガラスリサイクルの取組み」 AGC株式会社 材料融合研究所無機材料部ガラス・セラミックス材料チーム マネージャー
AGC社でのGHG (Green House Gas)排出量削減に対する目標と取り組みについて、実例を中心にご紹介頂いた。世界各国に複数の窯を有しているAGCでは、フロート窯由来のCO2削減のため、電気溶融やクリーンエネルギーだけでなく、リサイクルカレットの活用を促進している。現状、建築物や自動車などの使用済み製品から排出される板ガラスの多くが埋め立て処分されているが、原料発掘から製品廃棄までのすべてのサプライチェーンを考慮して、水平リサイクルすることでCO2の削減に取り組んでいる。実際に、建設会社やコンビニを運営する企業と協業し、水平リサイクルの取り組みを行っている事例をご紹介頂いた。 また、2030年以降には使用済み太陽光パネルの大量排出が予測されていることから、廃太陽光パネルを建材に再利用するという取り組みも始めている。リサイクルカレットは品質要件が厳しく、特に太陽光パネルのカバーガラス内に含まれるSb元素はフロートバス内で着色するといった課題があるが、大学と協働し、ハロゲン化揮発法による除去技術の開発にも着手しているとのことであった。 日本のガラスリサイクルを発展させていくためには、輸送時のCO2排出量を削減するといった意味でも日本各地にあるガラスメーカーで同様の取り組みができるようにカレットリサイクルの考え方を展開していくことが好ましいと考えている。 AGC社全体でのGHG排出量削減を目指した様々な取り組みについて知ることができ非常に参考になった。また、ガラスからの不純物除去などについても検討を行っていることがうかがえた。 今回は「ガラスとエコロジー」というテーマで3名の先生方にご講演頂きました。各国・各社の溶融プロセス工程における脱炭素化への取り組みについてのご紹介から始まり、ガラス中から特定の元素を除去する方法や、AGC社がガラスカレットのリサイクルを促進するために取り組んでいる内容について学ぶことができるまたとない講演会となりました。ご講演頂きました先生方に感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願いします。 以上 |
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