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第160回講演会報告 第160回若手懇談会開催報告
[講演1]「アクリルと水によるガラスとシリコン表面の平坦化」 東京大学 助教 博士(工学)
本講演では、無機微粒子や溶剤を用いず、アクリル製の定盤と水のみで材料を研磨する手法(WAPOP法)についてご報告いただいた。無機微粒子をスラリーとして利用する従来の研磨方法では、スラリーの作製や化学的性質の制御が必須、また微粒子を利用せずに金属材料を研磨パッドに利用する場合はコストがかかるなどといった欠点があった。一方有機材料は材料そのものが柔らかく、また安価などの特徴を有しているものの、これを積極的に用いた検討事例は少ない。そこで、無機微粒子を砥粒として使用する場合と同等な表面構造の形成が期待できる反応系として、有機樹脂が有するエステル結合の加水分解に注目した。 該結合を有する種々の有機樹脂を調査した結果、アクリルツールのみで明確な加工痕が得られた。これはエステル基が側鎖に位置する構造であり、加水分解が促進されたからだと推察される。さらに、加工液としての水の存在がアクリルを用いた研磨において不可欠であることも判明した。そこで、アクリル定盤と水のみでガラスやシリコンの平坦化加工を施した結果、原子レベルでの平坦化を確認し、またアクリル定盤の表面も平滑性が改善していた。ATRやXPS結果から、水中でのアクリル表面は水酸基やC-O-C結合の増減が確認でき、これも本現象が発生した原因の一つだと示唆される。 本現象のメカニズムを詳細に解明するためには、ATRやXPSに加え分子動力学法などの組み合わせが考えられる。また、回転速度や温度などの加工パラメータの最適化によって研磨レートの向上、応用先としてX線ミラーへの適用が期待できるとのことであった。 アクリルと水といった容易に入手可能な材料のみを用いて原子レベルまで平坦化できる手法についてご教示いただき、大変興味深いご講演だった。実用化された場合、半導体材料や光学素子用途以外にも幅広い応用先があるように感じた。 [講演2]「超音波を利用したガラスとウエハの接合における接合界面の応力・歪みの非破壊評価」 長野県工業技術総合センター 精密・電子・航空技術部門 加工部 研究員 本講演では、異種材料接合における接合界面に生じた応力・歪みの力学特性について、超音波を利用した非破壊での評価法についてご報告いただいた。強化ガラスとシリコンウェハを接合する手法として、電圧を印加しアルカリイオン欠乏層を形成することで接合する方法(陽極接合)を採用している。反応温度や電圧、電圧印加時間を変化させることで接合の程度(クラックやボイド、歪みの有無)がまったく異なっていた。特に接合による歪みの発生に関しては材料の線膨張係数差による影響が大きく、その差を小さくすることでアルカリ欠乏層がはっきりと確認できる(EDS)まで接合が改善したと推察される。 ガラスとシリコンウェハの界面の力学特性は、接合界面で反射する超音波の音響特性を利用した非破壊で評価を行った。これは、水中に接合体を浸漬させ、各材料の音響インピーダンスから音響反射率を算出する。算出した界面における反射率の分布から、内部ボイドやクラックなどの接合不良の位置を確認できることを特徴としている。また、レーリー波(横波)と縦波の干渉を利用したV(z)曲線の周期からは表面弾性波の音速(固体表面のヤング率やポアソン比、密度に依存)が計測でき、これもまた接合不良部の検出が可能である。本評価法を用いて、線膨張係数が異なるガラスとシリコンウェハとの内部音速や界面反射率を解析した。シリコンウェハとの線膨張係数差が小さいガラスであった場合、測定位置によらず音速や反射率(振幅)は同等であったため、他のガラスと比較して接合が改善されたと推察される。 接合材料の力学特性を解析することができる超音波装置(SAT)は、非破壊で測定する有効な方法だと感じ、非常に参考になった。 [講演3]「大気圧プラズマによるガラス官能基制御と応用」 AGC株式会社 先端基盤研究所 林特別研究室、工学修士
本講演では、大気圧プラズマを用いた表面処理によって、ガラス表面にアミノ基やフッ素基を導入する手法や、その応用先についてご報告いただいた。近年、高機能ガラスや複合化ニーズの高まりから、界面特性の制御が重要になっている。特に表面官能基は吸着反応サイトとして無視できず、シリカガラス一つとっても水酸基の配位の仕方で吸着エネルギーが異なること、またゼータ電位や耐水性にも影響を及ぼすと考えられている。水酸基の密度を向上させるには限界があり、その特性の向上も限定的なため、大気圧プラズマを用いたアミノ基やフッ素基を修飾する方法を確立した。大気圧プラズマは低コストかつ高 スループットであり、今回はエッチングやガラスの接合、吸着特性が変化する事例をご紹介いただいた。 低温接合への応用としてアミノ基を付与する事例を紹介いただいた。フュージョンボンディングのような2種材料の接合には通常高温で接合するが、より低温で接合可能な技術としてNH3プラズマ処理を行った。150℃でも十分な接合強度を有しており、分析の結果Si-NH2が存在していることを確認した。これが水酸基と反応することでSi-O-Siを形成していると示唆される結果であった。 フッ素基付与の事例として石英ガラスの帯電に寄与する水の吸着量制御について紹介いただいた。水の吸着量はH2OやCF4と比較してNH3が最良な結果であり、官能基の種類に依存していた。DFTで水素結合のドナー/アクセプター能を調査したところ、Si-NH2とSi-OHの共存で最大の相互作用を示すことが示唆され、表面抵抗率はNH3プラズマで最も小さくなることを確認した。これらの事例のように、官能基を導入・制御することで材料の表面特性が大きく変化することを見出した。 種々の官能基を付与することでその特性に大きな影響を及ぼすことをいくつかの事例に交えてご説明いただき、非常に勉強になる講演だった。 今回は「ガラスの表面加工技術」というテーマで3名の先生方にご講演頂きました。アクリルと水のみで加工できる手法をはじめ、超音波探傷で接合界面を評価する技術、官能基修飾による界面制御について学ぶことができるまたとない講演会となりました。ご講演頂きました先生方に感謝いたします。今後ともNGF若手懇談会をよろしくお願いします。 以上 |
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