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89回講演会報告について
第89回若手懇談会開催報告
【日時】2007年10月19日(金)13時30分〜19時 【場所】(社)ニューガラスフォーラム 田中田村町ビル8階A・B・C会議室 【参加人数】25名(講師3名、事務局は除く)
【講演内容】 今回の若手懇談会は志村先生(横浜国立大)、牧田先生(セントラル硝子(株))、川地先生((社)ニューガラスフォーラム)の3人の先生にご講演をいただきました。志村先生のご講演からはガラスの持つ美的な側面を再認識させられました。また、牧田先生・川地先生からは、ご研究のお話にとどまらず「大先輩」として若手にエールを頂きました。
[講演1]「ガラスのリ・デザイン」 横浜国立大学 志村 真紀 先生
志村先生はリサイクルガラスカレットを比較的低温で焼結することにより平板やブロック状のガラスへと再成形することを試みられた。この手法により制作されたガラスをRe-Glassと命名された。実際に試作された種々のRe-Glassとこれを建築に利用した例の紹介から、Re-Glassは失透物や泡・空隙などが相互に作用した美しいガラスであることが示された。また、ガラスリサイクルに関して、回収されたガラスをリサイクルする技術やRe-Glassそのものの(美術的な意味での)デザインに留まらず、リサイクルの仕組みやガラスのリサイクルを活用した地場産業の振興など社会的な側面をも含むガラスリサイクルの「デザイン」が必要と述べられた。最後に住民参加によりRe-Glassの手法を利用してランプシェードを制作・設置した「ガラスの花」プロジェクトの様子を紹介いただいた。芸術的な興味のほかに、理科教育や環境教育・地域のつながりの再生など多様な目的でRe-Glassを利用することができるのではないかとの感想を持った。
[講演2]「湿式成膜法を利用した製品開発を通じて感じたこと」 セントラル硝子株式会社 牧田 研介 先生
牧田先生が長年取り組まれてこられた湿式成膜法を利用した商品開発では、決まった成膜法が無いことから、製品毎に最適な成膜法を確立する必要があり、製品化に至るまでには種々の問題が発生する事が少なくないとのことである。今回は製造工程における問題解決の例として膜の白濁を解決した事例を取り上げられ、工場での「伝説」のレベルから始まって、白濁の本質的なメカニズムを把握する過程を解説していただいた。また、単にメカニズムを明らかにするだけではなく、その知見を工程管理へ応用する事が重要であると指摘された。ご講演の最後に「思いこみに陥らない」・「分かったつもりにならない」・「一般論を安易に信じない」等の戒めを述べられた。私も、思い当たる節があり、開発に携わる者としてこれらの言葉を肝に銘じておかなくてはならないと感じた。
[講演3]「ガラス溶解技術の科学化を願って」 社団法人 ニューガラスフォーラム 川地 伸治 先生
ガラス中に残存する泡は従来から製品歩留まりを悪化させる大きな要因であり、現在においても抜本的な解決には至っていない。川地先生は当時困難といわれた計算機実験によるガラス溶融炉内での泡の挙動の解明に挑戦された。当初は社内でも実現に懐疑的な見方をされることが少なくなかったそうである。ご講演では実際の計算例から、実炉での現象が計算機上で良く再現できることを示された。ご講演の後半では、シミュレーションに必要な高温物性・反応速度などについて述べられ、特にガスの融体への溶解に関して実験手法も含め詳細に解説していただいた。最近のご研究の話題として清澄剤として水が利用できる可能性があるとの夢のあるお話も頂いた。データーと思考の積み重ねを通じて、不可能を可能にするねばり強い研究姿勢を感じることが出来た。
講演後の懇親会でも講師の先生方を囲んでお話がはずんでいたようです。懇親会は講師の先生方と深く議論する事や会員同士の横のつながりを得ることの出来る貴重な場です。積極的にご活用下さい。
また、今回の講演会に先立ち今年度の若手懇談会総会が開催されました。佐藤会長により今年の活動報告と決算報告が行われた後、新年度の役員候補をご紹介し、総会出席者の皆様の拍手をもって佐藤会長の二報告と新役員を承認いただくことが出来ました。次回からは、藤原新会長をはじめとする新役員により企画・運営されます。今後とも若手懇談会をどうぞよろしくお願いいたします。
以上
2007年11月2日 若手懇談会 副会長 渡辺 義晴
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