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第84回講演会報告について
第84回若手懇談会開催報告
【日時】2006年7月14日(金)13時30分〜19時
【場所】独立行政法人 産業技術総合研究所 中部センター(名古屋)
【参加人数】23名(講師2名、事務局は除く)
(懇親会参加者:20名+講師2名+事務局1名)
【講演内容】
今回の若手懇談会は名古屋の産総研・中部センター見学会として開催された。見学に先立ち、2名の講師に貴重な話題を提供していただいた。講演後、サステナブルマテリアル部門の実験室と、センターの展示物を中心に見学させていただき、最先端の実験設備と活発な研究活動が伺える貴重な成果物を見せていただいた。
今回の見学会はNGFと合同であったため、参加者の世代も偏りが無く、見学会後の懇親会でも有意義な議論が行われた。
[講演1]「調光ミラー薄膜の研究」
独立行政法人産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門 吉村 和記 先生
CO2削減目標を達成するためにも省エネルギーへの取り組みは必須の課題であるとの認識に立ち、調光ミラーの開発について話題を提供していただいた。調光ミラーを使用することで、例えば夏場の太陽光を遮断し、逆に冬は太陽光を積極的に取り組むなど、住宅への熱の出入りをコントロールすることが可能となり、省エネルギーへの貢献は大きい。
具体的なアイディアとして、Mg-Ni系の薄膜のガスクロミック特性を利用した窓ガラスを示していただいた。薄膜が触れる雰囲気が空気のときは“鏡”であり、水素のときは“透明”になる現象を利用していた。Mg-Ni系薄膜で調光するスイッチは、水素ガス以外に電子であってもよい(エレクトロクロミック特性)。
実用化に向け、今後の進展が楽しみなご講演であった。
講演後の見学会にて、実物の調光ミラーでのデモを見せていただいた。その際に「水素ガスの使用が危険ではないか?」と気になり、質問させていただいたが、水素濃度は数%程度であり、安価な密閉手段もあるので、実用化には大きな障害とはならないことを説明していただき、十分に納得することができた。
[講演2]「金属ガラスの新しい創生技術」
独立行政法人産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門 三輪 謙治 先生
“金属ガラス”は、ガラスの研究開発に携わる我々参加者にとってはほとんどなじみの無いテーマであった。従来までにも、金属メルトを急冷して得られたアモルファス材料は、粒界が存在しないことから、高強度材料として使用されているが、作製可能な大きさに限界があり、微細な部品に用途が限定されていた。
通常、金属メルトを冷却すると結晶化する。従って金属ガラスにするためには急冷が不可欠であったが、講師らが開発した手法、メルトに電磁振動力を加える手法を用いることで、極端な急冷をすることなくバルク材料が得られることが示された。本講演では結晶化を十分に妨げるメカニズムについても詳しく説明していただいた。
我々“ガラス屋”もまた、結晶化のコントロールは重要な関心事であろう。この講演で、結晶化することが当たり前である金属材料で結晶化を妨げる、見事なコントロール手法を伺い、驚きを隠せなかった。
講演会の後に吉村先生のグループの実験室と、DLC(Diamond Like Carbon)を研究開発しているグループの実験室を見学させていただいた。複雑な構造物へのDLCコートが可能となっており、表面改質の手法としてして興味深かった。また、センターの展示物も見学させていただき、活発な研究活動が伺える貴重な成果物を見せていただいた。
見学会の後には恒例の懇親会が開かれた。今回はNGFと合同であったこと、また見学会でお世話になった産総研の皆様にも加わっていただいたことから、とても盛り上がった宴となった。懇親会の中締めで、2名の講師に一言ご挨拶をいただき、ガラスの若手研究者への激励をいただいたと共に、今後の研究交流への期待を込めたメッセージをいただいた。
個人的ではあるが、産総研に勤める旧知の研究者と再会することができ、とても楽しい時間を過ごすことができた。
次回以降も、さらに頑張って、この会が皆様の有意義な交流の場になるように努力します。多くの方のご参加を希望します。よろしくお願いします。
以上
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