若手懇談会前回例会
87回講演会報告について


第87回若手懇談会開催報告

【日時】2007年4月27日(金)13時30分〜19時
【場所】(社)ニューガラスフォーラム 田中田村町ビル8階A・B・C会議室
【参加人数】15名(講師3名、事務局は除く)

【講演内容】
  今回の講演会は「光」をキーワードに平野先生(住友電気工業(株))と小西先生(東京理科大学)・三浦先生(京都大学)にお話しいただきました。受講者からの質問も活発に行われ、熱気のある講演会となったと思います。各先生のお話からは光技術の明るい未来が示されたように感じられました。


[講演1]「石英ガラス系光ファイバの非線形応用」
      住友電気化学工業株式会社 平野 正晃先生

 ご講演では、非線形ファイバのみでなく光ファイバの基礎的な知識からお話して頂いた。通常のシリカガラスファイバーよりも高濃度のGeO2をコアに添加することで非線形性を高めたシリカガラス系の光非線形性ファイバー(HNLF)が開発されている。このHNLFを利用することにより波長変換・光アンプ・スーパーコンティニュウム光発生等の応用が実現している。  これらは光で光を制御する技術であるため現在主流の光電変換を伴う技術に比べ格段に高速で動作する特徴がある。現在では一部装置の市販も始まっていると解説していただいた。さらに、これらの装置の普及については、さらなる低コスト化が必要とされるとの見解を示された。普及に関しては、今後の光通信のトラフィックはさらに増加すると見込まれることを考えるとその高速性が重要視されるようになり、ある段階から急速に普及が進むのではないかとの感想を持った。



[講演2]「希土類添加ナノ蛍光体のバイオイメージングへの応用」
      東京理科大学 小西 智也 先生

 従来の有機色素を用いた蛍光バイオイメージングでは紫外線の照射が必要とされていたため生体組織・有機色素の双方にダメージが生じ観察可能時間が数分間に制限される欠点があった。小西先生は長時間観察を実現するために生体組織へのダメージが少ない近赤外線を励起光とした希土類添加ナノ蛍光体を利用することを検討された。また、近赤外線は生体組織への透過性に優れており、現在の紫外線を利用した方法に比べより深部でバイオイメージングが行える可能性があるとのことであった。
   バイオイメージングに利用するという目的を達成するために、高効率で発光するよう設計された種々のナノ蛍光体をそれぞれに適した方法で合成して、ポリマー修飾により生体適合性を付与するという、応用までの流れが明確に意識されていて、私のようなメーカーの技術者の立場から研究の進め方としても大変参考になった。


[講演3]「光誘起構造によるデバイス創生」
      京都大学大学院工学研究科 三浦 清貴 先生

 三浦先生には、フェムト秒レーザーを利用したガラスの加工の原理と実例についてお話をいただいた。フェムト秒レーザー照射により局所的な屈折率分布を生じさせることが可能であるためガラス内部に導波路を形成することや、フェムト秒レーザー照射による光還元を利用して金属ナノ粒子を析出させることが可能であり、これらにはデバイスとして種々の応用の可能性があることが示された。また、それらの構造が形成されるメカニズムについても平易に解説していただいた。
 先生のご講演をお聞きして、フェムト秒レーザーの照射条件とガラス組成を適切に組み合わせることにより、未知の新たな構造と機能性をガラス中に発現させる可能性があると考えられ、この加工法はナノガラスの開発にとって強力な手法であると感じた。



 講演会後の懇親会でも、熱心な意見交換が続いたようです。この場では、研究・開発の苦労話や研究に対する思いなど通常の講演会ではあまり語られないような事もお聞きすることができると思います。
 講師の方とこのように交流できる場はたいへん有意義だと考えていますので、より多くの方々が若手懇談会に参加されることを希望します。より魅力的な場になるよう努力してまいりますので、よろしくお願いいたします。

以上

2007年5月24日
若手懇談会 副会長
渡辺 義晴



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