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New Glass 140 Vol.38 No.3 (2023)


巻頭言

ガラスの新たな機能性を求めて ------- p.1 [試し読み] 弊所関西センターの前身である大阪工業試験所が設立されたのは,第一次世界大戦が終了する直前の1918 年であり,国産の工業製品が戦時需要によって欧米に,また欧米製品の途絶えたアジア市場に輸出されて,欧米製品との品質差が明らかになり,品質向上のための工業技術の研究が進められるようになった時期でもあった。当時,カメラや望遠鏡などの光学機器の普及が始まっていたこともあいまって,大阪工業試験所においては,1921 年に光学ガラスの製造研究が開始された。

産業技術総合研究所関西センター所長 辰巳 国昭


特集「サステナブル社会とガラス」

1)サステナブル社会とガラス ------- p.3 [試し読み] サステナブル社会の目指すところは,エネルギー的にも,物質的にも循環平衡型社会の構築と言っても差支えないと思います。ただ,エネルギー的循環平衡型社会の構築は,それに近づけることはできますが,熱力学の教えるところにより,それを完全に達成することは,不可能であります。しかし,物質的循環平衡型社会の構築に限って言いますと,これを構築することは不可能ではありませんし,使用する物質群は,目的とする製品の性能にも直結します。

兵庫県立大学 矢澤 哲夫

2)建築用板ガラスのリサイクルの可能性 ------- p.5 [試し読み] 地球環境配慮がより強調されるようになった昨今,エネルギーと資源を大量に使う建築物でも,様々な取り組みが求められるようになってきた。寿命が長い建築物の一生のライフサイクルでの環境負荷を計算すると,運用時のエネルギーが半分以上を占めることになり,それを減らすためにはまず省エネルギーに取り組まなければならなかった。建築用板ガラスも,これまでは省エネルギーに貢献するために,断熱性の高いガラスの開発と普及に,力を入れてきた。しかしこれからは,リサイクルにも力を入れていかなければならないと考えている。

東京大学大学院 清家 剛

3)太陽光パネル用ガラスをセラミックスやタイルへリサイクルする技術的可能性 ------- p.9 [試し読み] 近年,日本に限らず世界中で大量の太陽光発電パネルが設置されてきている。これらのパネルは,しばらくすると寿命を迎え,大量の廃棄物として発生する。それらの最終処分を避けるためにはリサイクルする必要がある。太陽光発電パネルの総重量の約7割を占める板ガラスは,異物なく回収することが困難である一方,カレットを利用するに際して不純物に対する許容度が非常に低い。そのため,廃ガラスのリサイクルは,路盤材としてのリサイクルを除けばほとんど行われていない。

(一社)ガラス再資源化協議会 加藤 聡

東京大学 醍醐 市朗

4)プラズマ・ケミカル複合技術を用いたガラス溶解炉排ガス処理 ------- p.12 [試し読み] ガラスびん溶解炉では燃料の燃焼でガラス原料を約1500 ℃で溶融する溶解プロセスで多くのエネルギーを消費する。燃焼過程で発生する排ガスには,燃焼由来のサーマルNOx(主成分NO)と原燃料由来のSOx,CO2 ,ばいじんなどの環境負荷物質が含まれている。このため,環境負荷物質を含む排ガスは,溶解炉の排ガスラインに設ける排ガス処理設備において,環境規制値以下に処理している。環境負荷物質のうち,ばいじんは電気集塵機やバグフィルタにより除去でき,SOx は水酸化ナトリウム溶液を用いた半乾式脱硫装置や湿式脱硫装置により低減できる。しかし,CO2 やNOx の効率的な低減は依然として課題になっている。

日本山村硝子(株) 山本 柱

5)Hydrogen Firing on a Float Glass Furnace ------- p.15 [試し読み] Glass is predominantly manufactured with direct firing of the furnace with flames fired above the glass melt. Energy is radiated directly from the flames to the molten glass and the furnace structure. Electric heating is also used but cannot be used to replace all the direct firing without disturbing the stratified flow of the molten glass in the furnace which is required to allow bubbles to rise to the surface. Without changing the method of production we need to use a net zero fuel such as biofuels or hydrogen in order to decarbonise the glass manufacturing process.

"Flat Glass Technology Group, Pilkington Technology Management Limited" Andrew Keeley

6)赤外光エネルギー利用の最近の展開−発電する窓ガラスの実現を目指して− ------- p.21 [試し読み] 赤外光を電力や化学エネルギーに変換するデバイスは透明にすることができる。紫外域の光を用いることでも無色透明でありながら光を電気信号やエネルギーに変えることのできる材料を作ることはできるが,紫外光は太陽光にはわずかしか含まれないため,赤外光を電気エネルギーに変換することのできる新しい材料の開発が強く求められている。赤外光のエネルギー変換の鍵を握る材料が縮退半導体やヘビードープ半導体と言われる材料群のナノ粒子である。これらのナノ材料は光によって誘導されるナノ材料中の電子の集団振動である局在表面プラズモン共鳴を赤外域に示す。

京都大学 坂本 雅典

7)MOD法によるナノポーラスVO2薄膜を用いた赤外線スマートウィンドウ ------- p.26 [試し読み] 二酸化バナジウム (VO2) は,結晶相転移温度(68 ℃)以上になると,高温相で正方晶系に属するルチル構造(金属相)をとり,それ以下の温度では単斜晶系に属する変形ルチル格子(半導体相) へ構造転移を起こす。VO2 はこの相転移現象により,温度上昇に伴い赤外線透過率が顕著に減少する反面,反射率は増加するため,「電気的駆動力なしに直接的に光スイッチング機能」をもつサーモクロミックガラスへの応用が期待されている。

大阪工業大学 和田 英男


研究最先端

融けたガラスは固体のガラスのように破砕する ------- p.29 [試し読み] 火山の噴火は熔融した岩石であるマグマが地表に噴出する現象である。このマグマの主成分はSiO2 であり,冷えて固まればガラスになる。よって,熔融したガラス(シリケイトメルト)の挙動,特に,マグマが粉々に破砕するメカニズムは火山学上の重要な問題となっている。マグマの破砕は爆発的噴火をおこす可能性がある。爆発的噴火がおきると火山灰や軽石が広い範囲で被害を発生させる。従って,爆発が起こる原因であるマグマの破砕メカニズムを理解する必要がある。液体の破砕現象としては,液滴を作る破砕が良く知られている。しかし,水の1万倍以上であるマグマの高い粘性率(10-1011 Pas)を考えると表面張力で液滴を作る事は現実的ではない。一方,火山灰などの噴火に伴う噴出物を観察すれば,マグマが固体的に破砕したように見える。

名古屋大学大学院 並木 敦子


ニューガラス関連学会

1)E-MRS 2023 Spring Meeting 参加報告 ------- p.34 [試し読み] "2023年5月28日〜6月2日の日程で,フランス・ストラスブールにある国際会議場にてEuropean-Materials Research Society 2023 Spring Meeting が開催された。ビザの関係か当日欠席の発表が一部見られたが,主催側の報告によると全日程合計で30 以上の国から2,100人以上の研究者が参加したとのアナウンスで,会場の盛況ぶりに納得した。この会議はE-MRSが設立された1983年から毎年,5月から6月の時期にほとんどがストラスブールで開催されており,共同開催やコロナの影響があった年を除いて継続的な会議であるとのことである。"

名古屋工業大学 大塚 喬仁

2)GOMD 2023 参加報告 ------- p.38 [試し読み] GOMD 2023 Annual Meeting はアメリカ,ルイジアナ州ニューオーリンズで開催された。会期は2023年6月4日から8日までの5日間,会場は中心街French Quarter の端に立地しているHotel Monteleone であった。GOMD とはGlass & Optical MaterialsDivision の略称であり,The American Ceramic Society(アメセラ)の部会の一つである。GOMD Annual Meeting は,日本セラミックス協会ガラス部会が毎年開いているガラスおよびフォトニクス材料討論会(ガラ討)と,似たポジションにあると言える。ガラ討では外国からの参加者はほとんど見受けられないが,GOMD には世界各国から多くのガラス研究者の参加があり,アメセラの国内学会であるにもかかわらず,ちょっとした国際学会に近い雰囲気である。

京都大学大学院 増野 敦信

3)日本ゾル?ゲル学会第21回討論会参加報告 ------- p.42 [試し読み] 私はゾル?ゲル法については素人もいいところである。その様な者にとって本討論会の最初に開催された豊橋技術科学大学の川村剛先生の入門セミナーは大変勉強になった。ゾル?ゲル法の定義から始まり,写真付きでの基本の実験操作等があり,ゾル?ゲル法のイロハから解説頂いたことは,私や同行した学生のような初学者にとってはありがたいものであった。また,ゾル?ゲル法がいかに多様な応用に繋がっているのかについて,古くからある材料から最先端の展開についてまでご講演頂いた。この様な入門編は,私がよく参加する他の学会では殆ど見当たらず,私のような門外漢にとって分野の全体像を知るよい機会であるし,なにより学会が新規参入者を歓迎してくれているという雰囲気もあり大変心地よいものであった。

東京大学大学院 伊藤 喜光

4)『 日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム』参加報告 ------- p.46 [試し読み] 2023年9月6日〜 8日,日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウムが,京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパスにて,対面(部分的にハイブリッド)で開催された。時折雨が強く降ったりする変わりやすい天気の中,多くの方が来場されていた。久しぶりに座る大学講義室の硬い椅子にお尻の位置を何度も変えながらも,交わされる議論は活発で懐かしく感じられた。今回,ポスターセッションの運営が変わり,口頭発表と並行して行われた。しかし,筆者が主に聴講した「ランダム系材料の科学」に関しては,口頭発表が2〜3日目に行われ,ポスターは1日目に設定されていたので,問題なかった。秋季シンポジウムは,オーガナイザー制で技術テーマごとにセッションが設けられている。

日本電気硝子(株) 高木 雅隆

5)日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム参加報告 ------- p.49 [試し読み] 日本セラミックス協会の第36回秋季シンポジウムが京都工芸繊維大学松崎キャンパスにて開催された。本シンポジウムは25のセッションで構成され,ポスター会場を含めると20箇所の会場にて実施された。筆者は主にバイオ材料のセッションに参加した。当セッションではリン酸カルシウム系結晶化物に関する研究発表が多く,ガラスに関するものは残念ながら少なかった。しかし,セッション内の発表件数は非常に多く,会期中,朝から夕方までびっしりと発表が詰まっており充実したものであった。ここで筆者が聴講した講演の一部について紹介する。

名古屋工業大学大学院 小幡 亜希子


関連団体

1)2023年「第13回定時総会」報告 ------- p.52 [試し読み] 2023年6月19日,ニューガラスフォーラム(NGF)の第13回定時総会が東京都新宿区百人町の日本ガラス工業センターにおいて,通常+Web の併用にて開催されました。委任状ならびに委任状による代理出席を含めて,正会員の議決権の過半数である14社の正会員にご出席いただき,総会は成立いたしました。参加者は,通常参加が事務局メンバーを含め16名,Web 参加が11名の計27名でした。定時総会ではNGF 会長である森議長のもと,2022年度事業報告案ならびに収支実績案及び決算案と,2023年度事業計画案ならびに収支予算案が審議され,いずれも全会一致で承認されました。

(一社)ニューガラスフォーラム 事務局

2)ガラス研究振興プログラム令和5年度(第2回)研究振興助成金授与式報告 ------- p.54 [試し読み] 2023年6月19日ガラス研究振興プログラムの研究助成金授与式が,ニューガラスフォーラム(NGF)定時総会・理事会に引き続いて日本ガラス工業センター会議室にてWeb とのハイブリッド形式で開催されました。会議室の参加者は事務局メンバーを含めて20名,Web参加者は12名で,合計32名の方々にご参加いただきました。ガラス研究振興プログラムは,ガラス産業連合会(GIC)とNGF 共催で一昨年の秋より活動を開始しており,今回が二回目の研究助成金授与式となります。

(一社)ニューガラスフォーラム 事務局

3)(一社)ニューガラスフォーラム第13回定時総会記念講演会聴講記「小惑星探査機はやぶさ2とその成果」 ------- p.56 [試し読み] 2023年6月19日に開催された(一社)ニューガラスフォーラム第13回定時総会において,JAXA宇宙科学研究所(以下宇宙研)の佐伯孝尚教授による記念講演があった。佐伯教授は宇宙研の学際科学研究系の教授であり,宇宙工学を専門とされている。本講演では,小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトに焦点を当て,開発当時の様子や実際に経験した困難などについて,佐伯教授本人の熱意も交えながらダイジェスト形式でお話しいただいた。

AGC(株) 加藤 毅之

4)第150回(一社)ニューガラスフォーラム若手懇談会見学会参加報告 ------- p.59 [試し読み] 2023年7月21日に東京都大田区の株式会社タケエイ東京リサイクルセンターにてNGF 若手懇談会見学会が開催された。今回は,株式会社タケエイの東京リサイクルセンター見学と,同社の大島伊貢先生と高木幸治先生による講演会に加えて,ご講演いただいた先生方と直接会話ができる貴重な機会である懇親会の3つで構成されていた。見学会では,ロールスクリーン等に代表される廃棄物の分別施設や廃棄物から生み出される製品の製造設備,その製品の実物などを拝見した。講演会では,廃棄物から製品を作り出すことで,処理業者から「製造業」へシフトチェンジした内容について,その意義と目指す姿だけでなく,具体事例を交えながら解説いただいた。

住友電気工業(株) 小川 慧


コラム

アジア起源の第3の古代ガラスを探る ------- p.62 [試し読み] "古代ガラスについては,世界全体について簡単にまとめられたものでは,メソポタミアで発見されヨーロッパに広がったSiO2, Na2O, CaOを主成分とする「ソーダライムガラス」と,中国で発見されたPbO を主成分として含む「鉛ガラス」の2種類に大別され,前者は「西のガラス」,後者は「アジアのガラス」と呼ばれることもある。一方,もう少し詳しく述べたものでは,これら以外にアルカリ成分として主にK2O を含み,アジア起源ではないかと推定されている「カリガラス」を含める場合もある。ただ,このタイプのガラスはビーズのような小型の装飾品にとどまり,その後製造が途絶えてしまったためか広く知られているとは言えない。しかし,弥生時代になって見られるようになる日本の古代ガラスについては事情は異なり,これら3 種類全てが見られるものの,ソーダライムガラスの例は少なく,鉛ガラスに加えカリガラスの割合が多い。"

元日本板硝子(株) 長嶋 廉仁


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